「モンスターペアレント」、通称「モンペ」。学校や教員に対して理不尽な要求や主張を行ない、教育現場を悩ませる保護者のことを指す。
この言葉が一般的に使われ始めたのは、2007年頃。翌2008年には、米倉涼子主演の連続ドラマ『モンスターペアレント』(フジテレビ系)が放映され、その認知度を高めた。
教育関係者にとっては、頭の痛い存在の「モンペ」だが、彼らが猛威を振るうのは学校だけではない。学習塾においても、同様に大きな問題となっているのだ。
都内の大手中学受験塾で講師をしているタケウチ氏(34歳・仮名)はこう語る。
「本社から毎年指導講習を受けるんですが、ある年、突然生徒への対応が厳密に制限されるようになったんです。そのきっかけになったのが、うちの塾の講師が、“頑張ったね”と声をかけて小学5年生の女子生徒の頭をなでた、ただそれだけの出来事でした」(タケウチ氏。以下「」内同)
生徒を激励するためにやった行動が、思わぬ波紋を生んだ。
「その女子生徒が、帰宅して保護者に『○○先生に頭をなでられた』と報告したのです。すると、その保護者が怒り狂って教室スタッフのもとへ怒鳴り込んできて、『セクハラだ! セクハラだ!』って叫び始めたのです。
彼はベテラン講師だったのですが、事態を収束させるために退社させられました。その一件から、指導マニュアルが厳密になりました。うちは全国展開している大手の塾ですから、問題を起こすと信用問題に関わるということです。だから今は男子生徒にも触れることが禁止されているんですよ」
タケウチ氏はいくつかの校舎で授業を掛け持ちしているが、とりわけ「モンペ対策」が苛烈なのは、“中学受験激戦区”というべき都心部の校舎だという。
「男性講師が女子生徒に触れてはいけない、これはまだ理解できるますよね。でもある時バイトで試験監督をしていた女性が、チャイムがなっても教室に入らない女子生徒の背中を押して教室に入れたんです。
そしたら社員が走って来て、『ちょっと君、生徒に触れるのやめて!』って。まだ相手は小学生ですから、あそこまで過敏になりすぎるのもどうかと思うんですけどね」