今上天皇即位からちょうど四半世紀。79歳になられた天皇陛下は連綿と続く日本の伝統を守り、震災で傷ついた国民を励まし、自らの病や老いと戦っている。そのお姿に日本国民は深い感動をおぼえ、勇気づけられる。ジャーナリストの山村明義氏が報告する。
* * *
振り返ると、東日本大震災直後の平成23年3月16日にも不安に陥った国民のために、「ビデオレター」という形式でお言葉を出された。ちなみに、現代の「お言葉」とは、実はかつての「詔勅」や「宣命」を意味する。
そして陛下はご高齢にもかかわらず、被災者を励まし、慰めるために被災地へのお見舞いを始めた。平成23年4月の千葉県旭市に始まり、岩手、宮城、福島の東北三県へはそれぞれ日帰りという強行スケジュールだった。被災地の負担にならないようにというご配慮からである。6月には大きな津波被害を受けた福島県相馬市にお出かけになり、慰霊の祈りを捧げられた。
お見舞いは翌年も続いた。ご健康を回復された5月には宮城県仙台市で開かれた国際会議にご臨席。陛下の強い希望で、わざわざ会議前日から現地入りされて被災者をお見舞いなさった。翌日午前中から仙台市若林区の仮設住宅を訪問されるためであった。
さらに10月、原発事故による放射能被害にあった福島県双葉郡川内村に足を運ばれ、除染作業が行なわれる様子を視察され、仮設住宅も見舞われた。皇室ジャーナリストの高清水有子氏はこう語る。
「(震災後の)天皇陛下は戦っていらっしゃいます。昨年5月の仙台市の被災地お見舞いから皇居にお帰りになって、3日後には英国にご出発になり、世界各国の元首に震災支援への感謝のお気持ちを直にお伝えになりました。
さらに英国から戻られて6日後には、山口県の全国植樹祭にご出席になり、7月の猛暑の最中には、長野県下水内郡栄村に(皇后陛下と)御行幸啓されています。栄村は震災で甚大な被害を受けましたが、東北の震災の陰で見過ごされがちでした。そのような状況で天皇陛下のご希望で実現したご訪問に、地元の方々は『天皇陛下がお出で下さったことですごく救われた』と話しています」
※SAPIO2013年2月号