中国の天安門事件で軍の導入を支持したなどとして、いまも人気がない李鵬元首相だが、その長男で山西省長代理の李小鵬氏も、李鵬氏に輪をかけて人気がないうえに、トンネルでの大規模な爆発事故や化学工場による環境汚染事故など立て続けに事故が発生し、その責任を問われている。だが、同じ太子党(高級幹部子弟)の習近平・副主席に泣きつくなど、驚異の粘り腰を見せている。
李小鵬氏は昨年12月19日、山西省副省長から省長代理に昇格したばかり。中国では省長に就任する前に、試用期間として省長代理を半年から1年間程度務める不文律があり、李小鵬氏も省長に昇格するのは間違いないとみられていた。
ところが、省長代理に昇格してから1週間も経たない12月25日、同省臨汾市のトンネルで大規模な爆発事故が発生。省当局は5日後の30日にようやく事故があったことを明らかにしたうえで、死者8人、負傷者5人と発表していたが、その後、実際は60人以上が死亡していたことが明らかになった。
さらに、31日には化学工場から有害な化学原料が漏洩して、付近の河川が汚染される事態となったが、その発表も5日後で、その間、有害物質が漏洩した対策はとられずじまいで、付近住民が抗議の集会やデモを行うなどしたため、マスコミは省政府の対応を激しく批判した。
また、1月7日には炭鉱での落盤事故が起こり、7人が死亡するなど、李小鵬氏が省長代理に就任するのを狙ったように、事故が次々と起こった。さらに、その対処の仕方があまりにの杜撰だったことから、李小鵬氏の行政能力が問われ、同省の市民からは李小鵬氏の辞任を求めることが高まっている。
李小鵬氏について、北京の共産党筋は「父親が李鵬元首相であることや、李鵬氏のコネクションを使って、李小鵬氏自身が実業界から政界に転身したとみられていることから、評判はよくなったところにもってきて、事故が多発し、まずい対応が相次いだことから、住民の不満が一気に爆発した」と指摘する。
危機的な状況に対して、李小鵬氏は李鵬氏から昨年11月に党総書記に就任した習近平・国家副主席に取りなしてもらい、自身の保身を図っていると同筋は明かす。
習副主席にとっても、李鵬氏から直々に頼まれれば、イヤとは言えず、李小鵬氏は太子党閥の若手幹部だけに、李小鵬氏の責任問題はうやむやにされそうだが、総書記就任後、改革の実行を叫んでいる習副主席がこの体たらくでは、ネット上からは「中国の舵取りが心配だ」との声も聞こえてきている。