中国で報道統制が行なわれているのは周知の事実。中国問題に詳しいジャーナリストの相馬勝氏によれば、中国では報道は共産党の主張を宣伝する「喉と舌」と呼ばれているという。
「報道規制を担っているのは中国共産党の中央宣伝部で、その下に各省の宣伝部がある。各省の宣伝部は毎日、新聞やテレビ局の幹部に対してブリーフィングを行ない、その内容がトップニュースになる。さらに新聞の場合は、発売前にでき上がった記事を宣伝部に届けることになっている。
今回、中国広東省の週刊紙『南方週末』で、憲政の実現を求めた社説が習近平総書記の唱える『中華民族の偉大な復興の夢』に沿った内容に書き換えられた問題は、事前に書き直させたが、正月号の社説ということで、通常よりも早めに検閲を行なったのだろう」
中国政府の国家新聞出版総署によれば、中国国内には全国、地方紙合わせて新聞約2000紙、雑誌は約1万誌あるが、その隅々にまで政府の言論統制の目が光っている。 無論、テレビやラジオも同様である。国営放送の中央電視台を頂点にテレビ・ラジオが計500局近くあるとされるが、そちらも厳しい管理下に置かれている。
北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院の渡邉浩平教授は指摘する。
「基本的にはテレビ局はどこも政府や自治体とほぼ同じ存在で、機関紙のように番組を党・政府が作る形になっている。衛星放送については、一般家庭は衛星アンテナを設置できないので、ケーブル回線を通じて見る。
『南方週末』問題を報じたNHKの海外放送が一時的に真っ黒になり、音声が途絶えたのも、省のテレビ局が事前にチェックして放送を止めたということでしょう」
言論の自由などほど遠く、かくも徹底した報道統制を敷く中国。それは「表現の自由」を全く無視した検閲手法だ。
※週刊ポスト2013年2月1日号