1月5日の東京・築地市場の初競りで、222kgの青森・大間産マグロが、史上最高額となる1億5540万円の値をつけた。寿司チェーン店「すしざんまい」を運営する株式会社喜代村が落札した。
初競りのマグロを獲得したこともある(2001年・2020万円)、東京・奥沢の寿司店『入船』店主の本田克己さんは今回の初競りについてこう語る。
「私はいつも、その日いちばんいいマグロを仕入れることを心がけていますが、あの日は手が出せなかった。本当にびっくりしましたよ。御祝儀相場のレベルをはるかに超えていましたからね。すしざんまいさんは、今まで誰もつけたことのなかった値段をドーンとつけたんだから、すごい。業界全体に活気が出て、良い方向にいけばいいと思います」
一方、水産行政に詳しい政策研究大学院大学客員教授の小松正之さんは、今回の競りを真正面から批判する。
「明らかに採算を度外視した宣伝目的でしょう。本来、あのマグロにそんな値打ちはないわけです。一般にはあまり知られていませんが、卸売市場法という、取引ルールを定め、商品を広く円滑に流通させることを目的に制定されている法律があります。法律の趣旨からして、あのような市場を歪める値は認められるべきではありません。
現在、マグロ資源の状況は必ずしもよくありません。乱獲からマグロの数が減り、値段が高騰を続けてきた。ただでさえ、世界中のマグロを買い漁り、『日本人はマグロを食べすぎている』と批判されています。今回の初競りは海外でも報じられていて、日本のマイナスイメージを強めてしまいかねません」
すしざんまいにも、お客さんから「よくやってくれた」という声の一方で、「なんだ、こんな高い値段で」というクレームも直接寄せられたという。すしざんまいを運営する喜代村の木村清社長(60才)が語る。
「ご批判の声には、“どうもすみません”と謝るしかありません。でも、買うと決めたらとことんまでやるということで、うちの従業員が頑張って競り落としてくれた。結果的にあの値段になっちゃっただけで、宣伝とかはまったく考えていません。お騒がせしちゃって申し訳ないが、ただ『今年もお客さんにいいマグロを食べていただこう』という気持ちだけなんです」
すしざんまい本店で最高値マグロの解体ショーが始まったのは、競り落とした当日1月5日の午後3時。大勢のマスコミや見物客が詰めかける前で、木村社長が自ら包丁を握り、1億5540万円のマグロが解体された。
「ぼくはほんのひとかけら食べただけ。社員にもひとかけらずつ食べさせて、後はその日のうちに、北は北海道から南は福岡まで全国50店舗に輸送して、その日の夜までには店に出しました」(木村社長)
※女性セブン2013年1月31日号