毎年120万人以上の日本人観光客が訪れる常夏の島、ハワイ――。1990年代後半から、ロコモコやアヒポキ(マグロを小さく切ったハワイ風の刺身)など、数多くの食文化も日本に流入してきたが、またぞろハワイアングルメが注目を浴びている。
昨年7月、神奈川・横浜みなとみらい地区にある複合商業施設「ワールドポーターズビブレ」内に、ハワイ関連の雑貨店や飲食店を21店舗集めた「Hawaiian Town(ハワイアンタウン)」がオープンした。その中で日本初上陸となるロコフード店が、休日ともなると行列をつくるほど賑わっている。
■Blue Water Shrimp(ブルーウォーター・シュリンプ)
2004年3月にハワイオアフ島で設立したガーリックシュリンプの専門店。プレートタイプで売られ、ライスに残ったガーリックソースをかけて食べるなど、一度食べたらやみつきの味に根強いファンも多い。昨年12月には東京・台場にもオープン
■Leonard’s(レナーズ)
オワフ島に本店を構えるマラサダの専門店。マラサダとは、外はカリカリ、中はフワフワの揚げパンのこと。毎年、横浜で開催されるハワイイベント「アロハヨコハマ」で初めてマラサダやハウピアパイ(ココナッツとチョコの2層パイ)などハワイアンスイーツが紹介されて広まったという
また、同タウン内にはハワイ島コナ地区でしか栽培されないコナコーヒーが味わえる「HONOLULU COFFEE(ホノルルコーヒー)」の2号店も軒を連ねる。この店をFC展開するのは、なんと「串家物語」「まいどおおきに食堂」などを運営する外食チェーンのフジオフードシステムだ。
ホノルルコーヒーは、現在、横浜のほか、台場、赤坂見附と計3店のみだが、今後4年間で80店舗以上の出店を目指している。スターバックスやタリーズなど競合ひしめくコーヒー専門店に今さら参入して勝算はあるのか。そのコンセプトを知れば、なぜ再びハワイブームなのかも見えてくる。
飲食業界のニュースサイト『フードスタジアム』編集長の佐藤こうぞう氏が解説する。
「スタバやタリーズなどセルフ式カフェは、店内でパソコンを開くビジネスマンが多く、仕事の延長で訪れる雰囲気。一方、ホノルルコーヒーはハワイ風装飾の落ち着いた店内で専門のバリスタスタッフが1杯ずつ丁寧にコーヒーを煎れてくれる。世の中のデジタル化、スピード化に疲れた人たちにとって、ハワイのゆったりした非日常的な時間・空間が心地良いのです」
佐藤氏によれば、ハワイ独自のカジュアルフードは、味はもちろん、同時にライフスタイルの提案がなされてこそ根付くものだという。
「2010年からブームとなっているパンケーキも、何層にも重ねてフルーツがてんこ盛りのボリュームを、皆でシェアして食べるハワイの朝食文化が日本でも受け入れられました。朝活、朝コンといった新しいライフスタイルが持て囃されているのは、こうしたハワイ流の延長といえます」
都心に居ながらハワイを味わいたいというニーズは、日本人の健康志向ともマッチしている。2010年から出店を加速する「ALOHA TABLE(アロハテーブル)」は、ロコモコに玄米をブレンドしたり、オーガニック食材をベースにしたハワイアン料理を揃えたりするなど工夫を凝らし、ビジネスマンやOLたちのリピーターも多い。
日本人の根強いハワイへの憧れとともに、今後もロコフードブームは続くのか。
「まだハワイには家庭料理をはじめ、日本に紹介されていないローカルフードがたくさんあります。そうした気取らないカジュアルフードを発掘し、マラサダやガーリックシュリンプのようにインパクトのある単品で勝負する店は増えるでしょう。また、多くのハワイアングルメを扱うレストランの新潮流は、ずばり『カジュアルリッチ』。休日にサンダルでシャンパンを飲みに行くようなスタイルが流行してくると思います」(佐藤氏)