今年の初競りでは、青森県大間産のクロマグロが1億5540万円の史上最高値をつけたことが大きな話題となった。しかし、実際にはマグロの漁獲量の減少はしており、その影響は、大間の漁師たちにも大きな変化を与えてきた。
「以前ならマグロは海一面にいたから、『おれはこっち、お前はあっち』という感じでやってこられた。でも、今は数が少ないし、サイズもどんどん小さくなっている。漁船にソナーをつけて、ひとつの魚群をみんなが我先にと追いかける。年のいった漁師はついていけない。子供にマグロ漁師をやらせたくないという親も多い」(大間の漁業関係者)
大きな船が必要になり、ソナーなどの装備にもお金がかかる。一方でマグロの量は減っているから、安定してマグロを獲ることはますます難しくなっている。大間の漁師たちに取材するなかで、幾人もの口から跡継ぎがいないこと、将来の日本の漁業への不安が聞かれた。そうしたなかでも、今回の初競りのように、漁業に夢とロマンがあるのは救いだろう。
実は1億5540万円のマグロを釣った竹内大輔さん(36才)も、最初は別の道を進もうとしていた。漁師は不安定だからと潜水夫を志したが、結局、後を継ぐといって戻ってきたそうだ。父親の薫さん(62才)が言う。
「今はやっと鳥が羽ばたこうとしているところかな。今回の初競りで、息子はたぶんこの道でやっていけると確信を持ったと思います。でも、親から見ればそんな甘いもんじゃない。自分の可能性をもっと伸ばして、広げていける漁師になればいいと思っている」
日本人がマグロを愛し、マグロを食べ続けるかぎり、マグロにまつわるロマンの火も消えることはないのだろう。
※女性セブン2013年1月31日号