景気上昇の兆しすら見えない日本。アップル、サムスンなどの海外メーカーに押され、かつての「ものづくり立国」の姿は霞んで見える。だが、落胆するのはまだ早い。大企業の失速を尻目に、日本には小さくてもシェア世界一の企業が、100社以上もあるのだ。
世界を席巻する「町工場」のオンリーワン技術にこそ日本復活のヒントが隠されている。たとえば香川県には、水族館洋大型アクリルパネルで世界シェア70%の企業「日プラ」がある。
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2002年に世界最大と認定された沖縄美ら海水族館の水槽パネル(幅22.5m、高さ8.2m)。その後記録はドバイ、中国が更新と、いま世界では水槽の巨大化競争が起きている。そしてこのいずれにもかかわっているのが日プラだ。
これらの巨大水槽に使われるアクリルパネルは、水圧に耐えられるよう厚さ30mmの板を何枚も貼り合わせる必要がある。単純だが、透明度を保ち、コンクリート以上の耐久性を持たせるには、歪みなく重合接着する独自技術が肝となる。これが日プラの独壇場なのだ。
転機は1993年。国内市場は知名度のある大手が有利だった。そこで敷山哲洋社長(79)は、企業規模に関係なく品質で判断するアメリカに活路を見出し、モントレーベイ水族館からの受注に成功する。このときの実績が評判を呼び、海外から注文が舞い込むようになった。
「私自身が技術屋だから、品質には妥協できない」
と静かに話す敷山社長。昨年は円高と原料高の二重苦にもかかわらず、創業以来最高の売り上げを記録した。
撮影■太田真三
※週刊ポスト2013年2月1日号