年末から年始にかけ、日本中に衝撃を与えた大阪市立桜宮高校の「体罰自殺」事件。男子生徒の自殺公表から1週間が経った1月15日、橋下徹大阪市長(43才)は同校の今年度体育系2科の“入試中止”を要請した。
入試実施に関する権限は教育委員会にあるが、橋下市長は体育系2科の入試が実施される場合は「入試関連予算を執行しない」と強硬な姿勢を示した。さらに、21日は同校を訪れ、全校集会で生徒たちに直接事情を説明。そして同日、市教育委員会は臨時会議を開き、橋下市長の要請に従う形で、同校体育系2科の入試の中止を決定した。
今回の入試中止について、教育評論家の阿部進氏は橋下市長の要請を支持している。
「今回の件で橋下市長が、はっきりと体育科の入試中止を強く言ったというのは、彼の英断だったと思います。誰もまさか、入試を中止するまでの強硬措置を取るなんて思ってなかったんじゃないですか。
だから、これまでのようになし崩し的に素通りするのではなく、初めて親も子供も教育委員会も真剣に考えざるを得なくなったんです。その意味で“体罰は絶対にやってはいけないんだ”と全国に強く示すことができたと思いますよ」
しかし、上智大学の加藤幸次名誉教授(教育学)はこんな指摘をする。
「本来、教育には政治的な中立性が必要です。そのため、市長が入試や担任教諭の決定について介入するべきではありません。それを“予算を執行しない”と教育委員会を脅すような形で実質的に働きかけるというのは、明らかな暴挙です。
そもそも、生徒が自殺したことの責任は体罰をした本人にあります。しかし、橋下市長はその責任を学校全体に負わせ、結果として受験生や在校生が犠牲になってしまっているんです。教育者としては決して許される事態ではありません」
また、教育評論家の尾木直樹氏は、橋下市長の要請を支持した上で、こう指摘した。
「生徒が教師の体罰によって命を落としてしまうという大きな問題が起きているのに、教育委員会はいつまでも改革案を出さず、学校や組織を自浄させることができませんでした。本当の問題はこの教育委員会の体質にあると思います」
※女性セブン2013年2月7日号