白澤卓二氏は1958年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。アンチエイジングの第一人者として著書やテレビ出演も多い白澤氏が、腸内細菌について解説する
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2003年には「ヒトゲノム計画」が完了し、ヒトゲノムの塩基配列が公表され、我々人間の遺伝情報、つまりヒトゲノムには約2万2000個の遺伝子が存在することがわかった。この発見により、当時は多くの病気の原因が解明されるものと期待された。原因や病態が解明されれば、今まで治らなかった難病疾患の新たな治療法が確立できるのではないかと考えられたからだ。
しかし、残念ながらこれまでのところ、ヒトゲノムの解明により人類が受けた恩恵は、当時の期待値を大きく下回っている。
実際、今や「遺伝子病」といわれているがんを例にとっても、診断技術や治療法がヒトゲノムの解明により大きく進歩するには至っていない。しかし、研究はさらに「ポストゲノム」の時代を迎え、新たな展開を見せている。
「長寿遺伝子検査」もその一つだ。
以前にも何回か紹介した「サーチュイン」という長寿遺伝子は、カロリー制限によりスイッチがオンになることが知られている。
赤ワインに含まれているポリフェノールにも同様の効果が認められるが、株式会社「メディファクト」(東京・恵比寿)は、このサーチュイン遺伝子の活性度を測る遺伝子検査を開発し、受託サービスを開始した。長寿遺伝子検査を外来診療に取り入れることにより、生活習慣の改善指導が本当に健康増進や病気の予防に効果的なレベルに達しているのかを知ることができる。
一方、「テロメア」も最近注目されている長寿関連遺伝子だが、近々このテロメア検査が外来診療に取り入れられそうだ。
長年テロメア研究を続けてきた広島大学薬学部の田原栄俊教授はバイオベンチャー「ミルテル」を設立。ミルテルではテロメア検査の受託サービスや「マイクロRNA」の検査を提供する予定がある。マイクロRNAは非常に短いRNAで、本来、細胞内に存在して遺伝子の発現調整をしている。
最近、マイクロRNAの一部が血液中に分泌されて様々な疾患の診断に応用が可能であることがわかっている。 ポストゲノムでは、新たな研究の潮流に期待が持てそうだ。
※週刊ポスト2013年2月1日号