【書評】『コンビニと日本人――なぜこの国の「文化」となったのか』(加藤直美/祥伝社/1575円)
【評者】青木均(愛知学院大学教授〈流通論〉)
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東日本大震災。この大災害の後、私たち日本人は政治の混乱や行政の不作為を嫌というほど見てきました。「政府はいざというとき、頼りにならない」と多くの国民は感じてしまいました。
その一方、この大災害の後に評価を上げた存在があります。それが他ならぬコンビニです。コンビニ各社が食べ物や日用品をいち早く被災地に届ける努力をしたことが、多くの国民の記憶に残っています。
いまや、コンビニは、ガス、水道、交通網などと並ぶライフラインとして認識されています。本書は、ライフラインとして認識されるほど、日本社会に溶け込んだコンビニの姿を文化と捉え、そのさまざまな最新の取り組みを解説しています。そして、私たちの生活とコンビニ各社の戦略との関係も記しています。
コンビニがなぜライフラインとして認識されているかといえば、食品を中心に生活必需品を扱っている、その店舗数が多く、近くにたいてい存在する、そして最先端の情報ネットワークと物流ネットワークを活用して、素早く正確に商品が供給できるからです。東日本大震災時、行政が被災地向け救援物資の供給において大混乱していた時、それを尻目にコンビニ各社は生活必需品を被災地に供給し続けました。
また、災害時だけでなく、平時にもライフラインとしての役割を果たしています。宅配サービスや生鮮品販売などによって、近くで生鮮品を中心とした食品を買うことができない買い物弱者に対応していることがその一端です。
本書はそんな取り組みを丁寧に説明しています。さらに,商品供給以外にもライフラインとしての役割を果たしているコンビニの姿も描いています。例えば、警察と連携し、防犯拠点になっていることです。女性の駆け込み先や高齢者の保護場として活用されているそうです。
各種サービスの提供、インターネットとの連動など幅広く生活をカバーするコンビニ。もうコンビニなしでは、私たちは生活できないようになりつつある様を、本書は指摘してくれています。
ちなみに、私にとってコンビニは、家族とケンカして居場所がなくなったときの時間つぶし場所です。そして、ちょっと飲み足りない時に酒を買い足す場所でもあります。
やっぱりコンビニはライフライン…。
※女性セブン2013年2月7日号