厳しい大学生の就職戦線のなかでも、群を抜いて熾烈なのが「女子アナ」の採用試験である。
民放キー局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ)の昨年の女子アナ採用人数はわずか7人。少ない“枠”を目指し、競い合う就職活動は過酷だ。
女子アナ就活の最初の山場は、3年の夏に早くも訪れる。各テレビ局が実施する「1日アナウンサー体験」のようなセミナーである。体験やセミナーといっても誰もが参加できるわけではなく、書類審査を通過しなければならない。
ニュースキャスターに憧れ、昨年、キー局入社を目指したAさん(23)がいう。
「フジテレビのセミナーのエントリーシートはA4用紙2枚でしたが、うち1枚は全部が写真スペース。『アイドル事務所への応募?』って思っちゃいましたよ(苦笑)。写真は全部で7枚、バストアップ、全身写真、証明写真が指定で、あとの4枚はテーマフリー。趣味やサークルなど、大学時代に力を入れたことをPRするような写真を載せる人が多かった」
ちなみにNHKにもセミナーがあり、こちらは1日8000円と有料だが、エントリーシートに写真は不要だったそうだ。
セミナーでは、スタジオに設置してあるカメラの前で原稿を読む通称「カメラテスト」などをこなす。
「参加者は、発声練習や原稿読みもすでにレッスンを受けたことがある人がほとんど。お昼には局アナと一緒の軽食会が開かれますが、和気あいあいとした雰囲気を各自が“演出”。一瞬も気が抜けません」(Aさん)
これほど真剣なのには、参加者たちが信じるある噂の影響がある。昨年セミナーに参加したBさん(22)はこう語る。
「優秀な人の『青田買い』があるんじゃないかって。下手したらセミナーの段階で内定もあるといわれています。だって、カメラテストの会場の隣にモニター室があって、審査員と思われる人が、リストに色々と書き込んでいる。ただのセミナーならこんなことしないですよね。
セミナーの終わりには“もしかしたら皆さんに連絡をさせてもらうかもしれません”と意味深なことも告げられました。実際に某局のセミナーでは私にも連絡がきて、“上級セミナー”に参加できました」
Bさんが参加した上級セミナーは参加費無料。2日間かけて筆記試験や、より本格的なカメラテストなどが行なわれ、VTRチェックも行なわれた。
「私はダメだったけど、そのセミナー参加者から女子アナになった人が何人かいました」(Bさん)
こういったセミナーについて、あるテレビ局社員は次のように語る。
「採用には直接影響しないといっていますが、夏目三久なんか、夏の段階ですでに局内で話題になっていた。そういう子がいるのは事実ですね」
※週刊ポスト2013年2月8日号