アルジェリアでテロ事件に巻き込まれ、10人の日本人が亡くなった。仕事のために海外へ行く機会は珍しくなくなっているが、海外での常識は、暮らして初めて気づくことも多い。
海外駐在員は異文化の壁にも直面する。インドネシアでマーケティング調査に奔走した、家電メーカー社員がいう。
「僕が現地にいたのは2006年のことです。低所得の家庭をピックアップし、200軒以上で白モノ家電に関する意識調査をしました」
長年の経済援助による親日意識の高いお国柄もあり、彼らはあたたかく迎えてくれたのだが……。
「手料理を振る舞っていただいたんですが、現地で使うのは濁った雨水。よく煮沸してないと、食当たりになります。僕のチームでは1人が緊急入院する大騒ぎになりました」
水質問題は中国も同じ。加えて大都会は、大気汚染という深刻な問題を抱えている。海外勤務者のメンタルヘルス事業を展開するMD.ネットのコンサルタントは表情を曇らせた。
「北京在住だと、ぜんそくや肺がんのリスクが高まる可能性があります。料理に使う油が悪く、消化器系をやられる駐在員や、白酒や老酒をイッキ飲みする習慣のせいで、肝臓を壊す営業マンも少なくありません」
南アフリカでプラント建設に従事した建設会社社員は、野生動物との“共存”に苦しめられたという。
「工場用地を視察していたら猛毒のコブラがあちこちで鎌首をもたげていて、大騒ぎになったものです」
宿舎の近くでは、巨大な黒いトキがコロニーをつくっていた。
「毎朝5時になると計ったように、ギャーギャーと凄まじい声で啼くんです。鳥には休日なんて関係ありませんから、毎朝早起きするしかありませんでした」
※週刊ポスト2013年2月8日号