国内

山本一郎氏「安倍氏が中韓に譲歩ならネトウヨは批判に回る」

 領土問題に刺激され、ネトウヨの数は増えているとされる。その支持を一身に集めてきた安倍晋三氏だが、首相となった今、逆にネトウヨとの“共闘”が道を誤る引き金になりかねない。ブロガー投資家の山本一郎氏がその理由を解説する。

 * * *
 総選挙に圧勝したことで、安倍氏は以前にも増して、自分はネット上に非常に強力な支持母体を持ち、自分こそがネット時代に相応しい政治家なのだと自信を深めたのではないか。もしそうだとしたら、安倍氏は自分を巡って起きている現象を客観的に見ているとは言えない。

 ネットには、同じような意見が同じ場所に集まりやすい特質がある。だからこそ、安倍氏のフェイスブックは盛り上がっているのだが、裏返せば、ネット上には安倍批判者が多く集まる場所もある。

 たとえば、「Yahoo!みんなの政治」が総選挙直前に行なったアンケートでは自民党と未来の党の支持率はそれぞれ26%、24%と拮抗していた。また、ブログの紹介サイト「ブロゴス」には安倍氏の経済政策を厳しく批判する記事が数多くアップされている。

 フェイスブックへの安倍氏の熱の入れようは、まるで熱烈な支持者の集会ばかりに顔を出し、批判的な人を含む世間一般の有権者を見ていないようにも映る。これは危険な状態だ。

 また、ネトウヨをはじめとするネットユーザーが、責任ある組織的な行動を取ることはあまりない。たとえば、安倍氏がフィード購読者をオフラインの支持母体として組織化しようとしたり、彼らから個人献金を募ったりしても、期待通りの成果は得られないだろう。

 そのことは、過去に森内閣打倒を目指して「加藤の乱」を起こした加藤紘一氏や、2ちゃんねらーの呼び掛けで著書がアマゾンで1位にランクされた麻生太郎氏が、一瞬、ネットユーザーから強い支持を受けながら、結局、その支持を政局や選挙に活かせなかったことが証明している。

 それどころかネトウヨから強く支持されていること自体が、実は大きなリスク要因ともなり得る。自民党こそ熟知していることだが、政権与党になれば領土問題ひとつ取っても相手のあることであり、さらに経済界などの意向も無視できないので、強硬姿勢を貫き通すことは難しい。問題を解決しようとすればどこかで政治的妥協が必要になる。そもそも政治とはそういうものだ。

 ところが、前述したようにネットユーザー、特にネトウヨは妥協を嫌う。妥協は現実世界の重要なコミュニケーション・スキルだが、ネトウヨにはその現実から逃避したくてネトウヨになっている者が少なくない。

 そのため、安倍氏が中国、韓国に対して譲歩するような姿勢を見せた途端、期待が幻滅に変わる。期待が大きければ裏切られた時の幻滅も大きく、安倍氏に対する批判も強くなる。ネットユーザーが掌を返すように、いっせいに安倍氏の批判に回る可能性がある。そして、結果が出るまでじっくり待つことをしないのもネット言論の特徴である。安倍氏に与えられた時間は長くない。

※SAPIO2013年2月号


関連キーワード

トピックス

石川県の被災地で「沈金」をご体験された佳子さま(2025年4月、石川県・輪島市。撮影/JMPA)
《インナーの胸元にはフリルで”甘さ”も》佳子さま、色味を抑えたシックなパンツスーツで石川県の被災地で「沈金」をご体験 
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン
隣の新入生とお話しされる場面も(時事通信フォト)
《悠仁さま入学の直前》筑波大学長が日本とブラジルの友好増進を図る宮中晩餐会に招待されていた 「秋篠宮夫妻との会話はあったのか?」の問いに大学側が否定した事情
週刊ポスト
新調した桜色のスーツをお召しになる雅子さま(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
雅子さま、万博開会式に桜色のスーツでご出席 硫黄島日帰り訪問直後の超過密日程でもにこやかな表情、お召し物はこの日に合わせて新調 
女性セブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
週刊ポスト