五輪やW杯など世界的なスポーツイベントで日本代表が活躍すると、株価に好影響を与えるというのは、「景気のジンクス」を読み解く達人として知られる三井住友アセットマネジメントのチーフエコノミスト・宅森昭吉氏だ。スポーツイベントと株価の関係について、宅森氏が解説する。
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1997年、サッカー日本代表がW杯初出場を決めた「ジョホールバルの歓喜」の翌日、日経平均株価は1200円も上昇した。この日は北海道拓殖銀行の経営破綻が発表され、市場は大暴落してもおかしくなかったが、人々のマインドはW杯に向けて一気に上向いたのだ。スポーツイベントが景気や株価に与える影響は決して小さくないことがわかる。
なかでも、サッカーや野球といった人気スポーツは影響が顕著だ。2012年のロンドンオリンピックでも、男女のサッカーで日本代表が勝利した計6試合すべてで、翌営業日の日経平均株価は上昇している。特に強豪を倒した翌日の上げ幅は123円(対スペイン、男子)、171円(対ブラジル、女子)と、大きくなっている。
また、これまで日本代表が2連覇している野球のWBC(ワールドベースボールクラシック)も、株価に好影響を与えた。2006年の第1回大会期間中は日経平均が832円、2009年の第2回大会では1054円も上昇している。
今年3月にはいよいよ第3回となるWBCが開催されるが、日本代表がもし3連覇の偉業を成し遂げることがあれば、景気や株価に好影響を与えることが期待できる。
スポーツイベントと株価の動きが連動する実例として、第2回WBC決勝で日本対韓国の決勝の日(2009年3月24日=日本時間)の日経平均の推移を見てみよう。
中盤までは安定感のある試合運びで、日経平均も横ばいで推移。ところが日本が1点リードで迎えた9回表、追加点のチャンスで小笠原(巨人)が三振に倒れると株価は一転して下落。その裏で韓国チームが粘りを見せるにしたがい株価は急落し、この日の最安値となる8297円27銭をつけた。
しかし延長10回表、先頭打者内川(横浜=当時)のライト前ヒットを皮切りに日本がチャンスを広げると株価はじりじりと上昇。イチロー(マリナーズ=当時)が勝ち越し打を放つと勢いづいて急伸した。
そして日本代表に金メダルが授与された14時50分、この日の最高値となる8504円41銭を記録。追いつかれて日本中がため息をついた瞬間から歓喜の表彰式までのわずか1時間で、日経平均株価は200円以上上昇した。
※マネーポスト2013年新春号