ある記念館の設立を巡り、石川県金沢市で騒動が起こっている。 発端は昨年11月。韓国メディアによる、「抗日運動家・尹奉吉(ユン・ポンギル)をまつる記念館が、来年4月29日までに在日本大韓民国民団(民団)の石川県地方本部内に設立される」という報道だった。
尹奉吉は、1932年に中国・上海の日本人街で行なわれていた式典会場で、居並ぶ日本側要人に対して爆弾を投げつけるという「上海天長節爆弾事件」を起こした男である。その後、現場で取り押さえられ、同年12月に連行先の金沢で銃殺刑に処された。
この事件の現場には、当時中国との停戦交渉を行なっていた重光葵(しげみつ・まもる)もいた。重光が第二次世界大戦の降伏文書に署名したとき、杖をついていたのは、この事件で右足を失ったからである。
韓国では教科書にも載り、知らない人はいないという尹奉吉だが、日本人にとっては紛れもなく爆弾テロの実行者である。その記念館をあろうことか、日本に設立しようとする意図は何なのか。
在韓ジャーナリストの対馬守氏は、次のように語る。
「日本人には奇異に見えると思いますが、韓国では尹奉吉以外にも爆弾を持った銅像や、そういった人を讃える記念館や記念碑がたくさんあります。サッカー場に領土問題を持ち込んだ選手が非難されない国です。爆弾を投げた人だって非難されません。英雄の処刑の地に記念館を作ろうという発想も、彼らにとっては普通のことなんです。それに民団としても、在日韓国人の民族意識を高めようという考えもあるんでしょう」
この記念館が、昨年から燻り続ける日韓関係の新たな火種にならないか、心配する声も金沢市には寄せられているという。
「一般の方から『作るのか』『許可したのか』といった問い合わせはありました。民団の建物の中に作るという話だったので、市としては関与のしようもありません」(国際交流課担当者)
記念館はできてしまうのか? 民団の石川県地方本部を訪ね、話を聞くと次のような答えが返ってきた。
「現段階では何も進んでいません。我々の事務所や記念館を作ろうとしている部屋は賃貸で、ビルの大家から記念館を作ることにNGが出ている。今後もできることはないと思いますね。そもそも韓国のマスコミが、こっちの事情も知らないで勝手に書いたんですよ!」(本部に勤める職員)
※週刊ポスト2013年2月8日号