コンビニエンスストアでの買い物を自宅でひろげてみると、気付くことがある。統一のコンビニロゴが入ってメーカーの顔が見えにくい、いわゆるPB(プライベートブランド)商品のいかに多いことか。
それもそのはず。セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートの大手3社で、売上高全体に占めるPB商品の割合は4~6割、セブンに至っては2015年に7割にまで引き上げる方針だという。コンビニが製造小売業(SPA)化したと言われる所以はここにある。
特にPB食品の充実ぶりは、総合スーパーをもはるかに凌ぐ。マーケティング会社である富士経済の調べによると、コンビニのPB食品市場は8643億円(2012年見込み)あり、2017年には1兆1225億円に拡大すると予測している。かたや、総合スーパーは現状でも4449億円とコンビニの半分ほどの規模しかない。
「もともとコンビニで売られている弁当や総菜は、男性・単身者・若年層から人気でしたが、東日本大震災があって以降、状況は変わりました。商品の配送網が混乱を来たす中、安定的で衛生的な商品調達を続けるコンビニ食品でご飯を済ませようという50代以上の主婦や高齢者が増えました」(富士経済・食品チーム調査員の岡本史香さん)
コンビニがスーパー代わりになっている現状を物語る。バリエーション豊富なPB食品のうち、売り上げを底上げしているのが、野菜煮物や煮魚など個食サイズに密封された「パウチ惣菜」のヒットである。
■セブン―イレブンジャパン「セブンプレミアム」
さばの味噌煮(178円)、かぼちゃ煮(138円)、豚角煮(298円)
■ローソン「ローソンセレクト」
肉じゃが(198円)、筑前煮(228円)、里いも煮(128円)
■ファミリーマート「ファミリーマートコレクション」
ひじき煮(118円)、たけのこ煮(118円)、さつまいも煮(118円)
さらに、最近では売れ筋の煮物系に加え、ポテト、パスタ、根菜を使ったサラダが定番化している。今後は和食だけでなく、ロールキャベツや鶏肉のトマト煮込みなど、調理に時間のかかる手の込んだ洋風メニューも増えそう。
だが、パウチ惣菜にも課題はある。都内に住む60代主婦が話す。
「パウチ惣菜は即食需要のデリカ食品に比べて買い置きができるメリットがあるので、その日の都合でおかずを1品増やしたり、減らしたりできるのがいいですね。でも、やっぱりデパ地下や街中の手作り感のあるお惣菜屋さんのほうが美味しい気がします」
もちろん、味にうるさい女性の舌をうならせようと、コンビニ各社は商品開発にも余念がない。コンビニの飽くなき挑戦は、PB製造元の食品メーカーとの、より強力なタッグなくしては叶わない。
いずれにせよ、いまの勢いが続けば、近い将来、店内のすべての商品がコンビニブランドで埋め尽くされる日が来るのか。
「自社PBしか扱わない食品製造小売業は、高収益を期待できる半面、消費者の支持を得られなくなった際のリスクもあるため、一長一短の側面があると思います」(岡本さん)
“近くて便利”なコンビニ業態の行き着く先は、果たして――。