国立感染症研究所によれば、今年第3週(1月14~20日)に全国の医療機関で受診したインフルエンザの患者数は、前週の2倍近くにあたる約140万人。過去10年で2番目の流行となった、去年の同時期の患者数約111万人を上回るペースとなっている。
そんなインフルエンザの大流行に備えて予防接種を受けたという人も多いはずだが、こんな驚くべき数字がある。実は、日本臨床内科医会の研究によれば、予防接種にどれだけの効果があるのかを示す“有効率”は、最新のデータ(2010~2011年)でたったの20%ほどでしかないのだ。ということは、仮に予防接種を受けたとしても8割の人が効かないということになってしまう。
そもそも予防接種とは、ウイルスや細菌の毒性を弱めた“ワクチン”をあらかじめ投与し、そのウイルスや細菌の感染から身を守る“抗体”を体内に作っておくためにある。インフルエンザの場合、ウイルスにA、B、Cという3つの“型”があり、Aのなかでもさらに「香港型」、「新型」他の“亜型”があるなど、種類が多い。流行する型は毎年異なるため、流行シーズンに合わせてワクチンを作り替えていく必要がある。
そこでまず、毎年WHO(世界保健機関)が次のシーズンに“流行するであろう”型の種類を、過去のデータや、先にインフルエンザが流行している南半球の状況などから予測する。それを基に、国立感染症研究所が、毎年4~5月にどの型のワクチンを作るか決定する。その年の12月以降の本格的な流行シーズンに備えるためだ。
ところが、決定から流行までに半年以上の期間が空いてしまうことで、インフルエンザウイルス特有の問題が発生すると、日本臨床内科医会インフルエンザ研究班副班長で廣津医院院長の廣津伸夫さんは指摘する。
「はしかや日本脳炎など他のウイルスと違って、インフルエンザウイルスはどんどん変異していくんです。ワクチンの型が決定されてから実際の流行シーズンに入るまでの半年ほどの間にも、変異してしまうことが多々あると考えられています。そうすると、ワクチンの型と実際に流行している型にズレが生じ、予防接種でできた抗体が、うまく機能しなくなるんです」
厚生労働省によると、今年作られたワクチンは、「A香港型」、2009年に流行した「新型」、「B型」の3種類の混合タイプ。現在流行しているウイルスの型はA香港型であり、予測は一応、当たっている。しかし、インフルエンザに詳しい、みやがわクリニック院長の宮川浩一さんによれば、それだけでは足りないらしい。
「一般的には、“A香港型”や“新型”としかいいませんが、A香港型のなかにもさまざまな種類(株)があるんです。ひと口にA香港型といっても、『ビクトリア/361/2011』とか、『ウルグアイ/716/2007』とか、細かい差があるんですね。ワクチンとウイルスはこのレベルで一致しないと、完全に発症を抑えることは難しいんです」
そして、今年のA香港型の場合、ウイルスが例年より大きくマイナーチェンジしていると考えられるという。
「つまり、それだけワクチンも効きにくくなっているということなんです」(前出・廣津さん)
※女性セブン2013年2月14日号