中国共産党の中枢で、毛沢東思想やマルクス・レーニン主義に関する研究、最高指導者の重要講話などを各国語に翻訳する党中央翻訳局の最高幹部である衣俊卿局長(55)が翻訳局の女性研究員と不倫関係にあり、しかも以前に翻訳局に就職できるよう斡旋するとして、数百万元もの口利き料や高級時計など多額の金品を要求し、貢がせていたことが発覚した。衣氏は更迭された。
結婚の約束などを守らないことに怒った不倫相手の女性が衣氏との出会いから不倫までの物語を12万字にわたって小説風にまとめ、不倫の回数が17回に及んだことなどの詳細をネット上で暴露したことが発端だ。
この衣氏の更迭については、お堅いことで知られる国営の新華通信社までもが報じたほどだが、ほとんど新聞や雑誌、テレビ、ラジオなどのメディアが微に入り細に入り報道している。
それによると、衣氏の不倫相手は博士号も持つ常艶さん(34)。彼女は当初、局長だった衣氏に近づき、肉体関係を結んで、衣氏に取り入って、同局への就職を果たしたのちも、北京市の戸籍取得などの便宜を図ってもらっていた。
これに対して、衣氏はその都度、金品も要求。常さんは衣氏に結婚を約束させたが、衣氏には常さん以外にも不倫相手がいることが分かり逆上し、同局の職場仲間に衣氏との不倫関係を暴露するメールを送るなどの嫌がらせをして、ついには、不倫中の衣氏の言動などを事細かく書いて、インターネット上で公表した。
衣氏は昼休みに、北京のホテルの日本料理屋で寿司をつまみ、日本酒を飲むのが大好きで、その後、そのままホテルの部屋へ。その寝物語で、「俺は最高指導者の習近平・党総書記に好意を持たれている。それで出世する。つまり、俺は本当に才能があるんだよ」などと自惚れともとれる発言をしていたという。
衣氏は遼寧省生まれで、黒竜江大学長、黒竜江省党委委員会宣伝部長を歴任。その豊富な学識や学会での優秀な活動が中央の党指導部の目にとまり、党中央入りし、2010年には職員が300人以上もいる党中央編訳局のトップに抜擢された。衣氏は中国現代外国哲学学会の副会長や中国・ロシア・東欧・中央アジア学会の副会長、中国弁証唯物主義学会常務理事、中国人学学会常務理事、中国マルクス哲学史学会理事などの肩書きを持つ。
この不倫事件については、国内メディアだけでなく、米ニューヨーク・タイムズも取り上げており、昨年11月に発足したばかりの習近平指導部では賄賂や女性関係など幹部の腐敗問題を厳重に取り締まると宣言した手前、さしものエリート党幹部も見せしめのために“血祭り”に上げられた格好だと伝えている。