厳しい大学生の就職戦線のなかでも、群を抜いて熾烈なのが「女子アナ」の採用試験である。
民放キー局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ)の昨年の女子アナ採用人数はわずか7人。少ない“枠”を目指し、競い合う就職活動は過酷だ。
あえなくキー局の試験に落ちた女子アナ志望者たちは、大阪の準キー局や各地の地方局での採用を目指し、“全国行脚”の旅に出る。どうしても女子アナになりたい彼女たちにとって、地方局は最後の砦なのだ。
有名になりたくて女子アナを志望したというAさん(23)は語る。
「北海道から沖縄まで受けられる所は全部受けました。15社くらいです。採用が終わりに近づくと、同じ顔と地方で“再会”なんてことも珍しくない。
地方局では、選考を受けた当日に結果が張り出されることがあるんです。その結果が受け止められずに、人事担当者に『なんで私の名前がないんですか!』と詰め寄り、泣きだしてしまった子もいました。それだけみんな必死なんです」
Aさんは、結局、女子アナの道を諦め、出版関係の会社から内定をもらった。スクール代、写真、スーツ、郵便代、飛行機や新幹線代、それに宿泊費などを合わせると、費やした金額は約170万円。奨学金を利用し、兄や友人からも活動費を借りたという。
「女子アナになるために、学生時代にやりたかったこともほとんど犠牲にした。今は後悔のほうが大きいかも(苦笑)」(Aさん)
だが、なかには地方局がすべて終わってもなお、“終戦”をよしとしない就活生もいる。ニュースキャスターに憧れ、昨年、キー局入社を目指したBさん(23)がいう。
「周りには、翌年も受験するために就職浪人する人や、一般企業に就職しながら、次の年も受験する“仮面浪人”もいました」
実際、現在『ニュースJAPAN』のキャスターとして活躍する大島由香里(フジテレビ)は、大学3年の時に落ちて、4年時に再度応募して受かっている。
※週刊ポスト2013年2月8日号