東日本大震災からの復興財源に充てるため、今年1月から所得税、来年6月から住民税の臨時増税が始まる。消費税は来年4月から8%に、再来年10月から10%に上がり、富裕層を対象とした所得税と相続税の最高税率も再来年1月から引き上げられる予定だ。
このままではお上に年貢を搾り取られる一方、何とか対抗する手段はないのか。実は、サラリーマンが税金面で得する方法が新しくできたことはあまり知られていない。それは昨年、税制改正された給与所得者の「特定支出控除」制度である。
簡単にいうと、仕事に関連して使った必要経費を確定申告することによって、払いすぎた税金を取り戻すことが可能になったのだ。
来年2月の申告から適用されるが、その際、今年1月1日から12月31日までに使った費用の領収証やレシートが必要となる。では、実際にどのような項目が必要経費として認められるのか。本誌は専門家の解釈や国税庁の資料の記述を参考に、それらについて具体的に分析した。
【勤務必要経費(図書費)】
今回の改正で新たに適用対象となったものの1つで、書籍、新聞、雑誌などの図書を購入するための費用だ。仕事における情報収集の一環と考えれば、スポーツ新聞でも、マンガ雑誌でも、金融新聞の電子版でも、認められるという。ただし、電子版を読むためのパソコンやリーダーは対象外だ。
【勤務必要経費(衣服費)】
これは新たに適用対象となったものだ。たとえば、スーツの着用が社内規定などで明文化されていなくても、研修で着用の必要性を説明されていたり、着用が社内の慣行になっていたりする場合、その購入費用は対象となる。
税理士の落合孝裕氏はこう説明する。
「スーツを着れば必ず必要なワイシャツ、ネクタイも対象になりますが、靴、靴下、下着は対象外でしょう。ただし、作業現場で着用する安全靴、安全手袋などは対象になります」
自由な職場で、私服の着用が慣行になっている場合、その購入費用は対象外だ。「ただし、クールビズに関して社内規定を作れば、ポロシャツなどの私服も対象になるかもしれない」(同前)という。
【勤務必要経費(交際費等)】
これも新たな適用対象だが、どこまでが適用範囲か最も気になるものだろう。国税庁の資料によると、〈得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(中略)のための支出〉というのが、「交際費等」の定義である。
「これに従うならば、一般の飲食店での飲食費だけでなく、クラブやキャバクラでの飲み代、接待ゴルフの費用も対象となります。今はまだ取引がない相手でも、将来の取引先にするための飲食費なら対象になるでしょう」(同前)
※週刊ポスト2013年2月1日号