今年は爆弾低気圧の影響で都心部にも大雪が降るなど、厳しい寒さに見舞われるこの季節。そんな真冬の女性ファッションの定番と言えば、ロングブーツ――という時代が過去のものとなりつつある。
「ロングブーツの売り上げは落ちています。ブームの頃と比べると、半分以下になっているのではないでしょうか」
こう語るのは、靴・バッグのコンサルティング会社、アジアリングの坪谷聡子氏だ。90年代に大流行した“アムラー”ファッションなどによってロングブーツ人気は高まり、長らく女性の冬靴の定番となっていたが、ここ数年で、環境が激変した。
靴業界全体も苦境にある。靴・履物小売市場は2007年度から5年連続で減少(矢野経済研究所調べ)。1足あたりにかける金額も減少傾向にある。2001年と2011年を比較すると、婦人靴の「購入数量」は1.392足→1.433足と増えているのに対し、「購入額」は5732円→4948円と減っている(社団法人日本皮革産業連合会の発表)。単価の高いロングブーツの苦戦も、業界への打撃の一つとなっているようだ。
ロングブーツが売れなくなった背景を前出の坪谷氏に聞くと、複合要因が見えてきた。
「一つには、多様なファッションを求める傾向が強くなっていることがあります。ロングブーツは、コーディネートを限定するんですね。一方、ここ数年で人気が高まったショートブーツは、ボトムスを選ばない。つまり、ミニスカートでもロングでも、パンツでも合わせられる。ある程度の防寒をしつつ、靴1足で、様々なファッションを楽しみたいという方が増え、ロングブーツからショートブーツへと、人気が移行しています。
それから脚を、隠すのではなく、出すようになっている。この流れは、レギンスやトレンカが広がった反動でもあると思います。昨年は、秋口頃までナマ脚の方がけっこういましたし、ストッキングも復調している。脚を出して楽しみたいという方が増え、ロングブーツよりショート、冬でもパンプスが選ばれるようになってきています」
大手百貨店の靴売り場に聞くと、今年は「ブーティ」と呼ばれる、くるぶしあたりまでの短い丈のブーツが好調だという。足首は防寒しつつも、脚は潔く見せるのが今時のようだ。靴専門店もショートブーツの品ぞろえを強化。靴販売大手のチヨダは、昨年12月から990円のショートブーツの販売を開始し話題となった。
次に坪谷氏は、苦しいお財布事情を指摘する。
「長年の不況によって、OLさんたちのお財布の紐は固くなっています。ショートブーツは、ものによっては、パンプスの1割増しくらいの価格で買える。ロングブーツを買うより、安いんです」
ロングブーツと一言で言っても、長さや素材によって価格帯は広いが、百貨店では3~5万程度が相場。それに比べると、ショートブーツは一般的に価格が下がる。
もう1点、気候の変化も消費者心理に影響しているようだ。
「ここのところ猛暑が続き、夏が長くなっています。結果、冬に限られるロングブーツを履く期間は短くなっている。一方、ショートは、足全体を覆うわけではないですから、秋から春頃まで楽しめる。どうせ買うなら、長く履けるもののほうがお得というわけです」(坪谷氏)
最近は、梅雨時期に男性向けレインブーツがヒットするなど、ブーツの幅は広がり、ブーツ=冬のものという定番も崩れつつある。ブーツ人気は衰えず、だが、ロングブーツに限って見れば、強い逆風が吹いているようだ。