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小久保裕紀氏 巨人への電撃無償トレードの内幕を初めて語る

 昨年2000本安打を達成し現役生活を終えた、元ソフトバンクホークスの小久保裕紀氏(41)が、自叙伝『一瞬に生きる』(1575円、小学館刊。1月30日発売)を上梓した。弱小球団だった頃の悲哀や、度重なる大けが、選手生活を支えた読書……著書には、小久保氏自身の半生が赤裸々に綴られている。

 その小久保氏の「半生」を語る上で避けて通れないのが、やはり2003年のオフに起こった、ダイエーから巨人への異例の「無償トレード」だ(2007年シーズンからソフトバンクに復帰)。当時は沈黙を貫いた小久保氏だったが、自叙伝を書き終えた今、初めて当時の真相について語り始めた。

 * * *
「実は、トレードを訴えたのは僕自身なんです。ホークス以外ならどこでもよかった」

 低迷期からチームを支え、“ミスターホークス”とまで呼ばれた球団の中心選手だった小久保氏。彼をここまでの心境にさせた背景には、フロントとの埋められない確執があった。

「当時のダイエーのフロントはひどかった。外部の人間は入れない決まりの選手サロンに、夜の世界の派手な女性を連れてきたり、ヒーローインタビューに登場する選手に、彼女達と写真を撮ることを強要したり。そういうことに、私は選手会長として猛抗議してきました。フロントとしては面白くなかったでしょうけどね」

 この頃のフロントは、成績と関係ないグッズの売り上げを選手の年俸の査定に入れるなどして、多くの選手から不満が出ていたという。小久保は選手の先頭に立ってフロントに改善を求めていたが、球団側の心ない発言の数々に、次第に不信感を募らせていく。

「例えば、2003年3月6日の西武ライオンズとのオープン戦。ホームでのクロスプレーで靱帯断裂などの大けがを負ったときのことです。当初オーナーは『全額負担するから早く治してくれ』といってくれたので、アメリカで手術を受けるつもりでした。ところがその数日後に呼び出され、『あれはなかったことにしてくれ』ですからね。もうこういうフロントの下ではやれないな、と思いました」

 結局、小久保氏は手術費用のほとんどを自分で支払った。この年は全く試合に出られなかったが、チームはリーグ優勝し、さらに日本シリーズも制覇する。しかしその日本シリーズで、さらに小久保氏のプライドを傷つける事件が起きた。

「この日本シリーズのある試合を、私の友人が見に行ったんです。席はホークスの関係者用のもので、友人の前の席には当時のフロントの人間がいた。その人間が、こういっていたそうです。『今年は小久保がいないから勝てた。彼がいると若手が萎縮する』とね」

 こうした経緯から、小久保氏は「ホークス以外ならどこでもいい」と考えるようになった。自分の移籍先が巨人だったことや、無償トレードになった理由は知らないという。

「巨人はドラフトのとき、ホークスとどちらに行くか迷った球団ですが、自分で巨人を希望したわけではないんです。移籍先がわかったときは、縁があるのかなと思いましたけどね。結果的にホークスに戻ることになったけど、巨人に行ってよかったですよ。ポジション争いに燃えたし、生涯の友人もできました。(高橋)由伸は、先日、福岡の講演会にゲストとして来てくれました。出番はわずか30分ですが、彼が出てきたら、僕より多くの拍手をもらってました。コラ、拍手しすぎやろ、と(笑い)。巨人に行って、こんな友達ができたんですから、今から考えれば、『当時のフロント、ありがとう』ですよ(笑い)」

 自叙伝は、引退後に小久保氏自身が朝5時起きで書き続けたという力作。若手選手へのハッパのかけ方なども掲載されており、野球ファンでなくても必読の書となっている。

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