今年第3週(1月14~20日)にインフルエンザで全国の医療機関で受診した患者数は、前週の2倍近くにあたる約140万人。去年の同時期の患者数約111万人を上回るペースで流行している。その原因について医学博士の南雲吉則先生が解説する。
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まずはインフルエンザの始まりについて話そう。
インフルエンザの語源は“インフルエンス(影響)”。この病気が冬に流行するので、中世ヨーロッパでは寒気の影響だと考えられていたんだ。
でも本当の原因は冬にやってくる別のものだった。それは“渡り鳥”。インフルエンザの原因は鳥の腸管にいるウイルスだったんだ。
人類の生活圏が広がって、人間が鳥の棲む場所を侵すようになったため、餌場を奪われた鳥たちはやむなく鶏の餌をついばんで、そこに糞を落とした。そして鶏に感染したのが“鳥インフルエンザ”だね。やがて鶏から豚へ、豚から人へと感染が広がっていったんだ。それが人間社会に定着して毎年流行するのが“季節性インフルエンザ”というわけ。
ウイルスって、実は単純な構造をしていて、自分では繁殖できないんだ。だから特定の動物に棲みついて、その動物の細胞に寄生して、その力を借りて繁殖する。
といっても、ウイルスは何か悪さをするつもりはなくて、毒も持っていない。寄生先の動物を殺してしまったら自分も死んじゃうから、おとなしく繁殖してやがては出てゆこうと思っている。だから渡り鳥は腸の中に鳥インフルエンザウイルスがいても仲良く共生して病気にならないでしょ?
ところが人間はこのインフルエンザウイルスに慣れていないから、体の免疫系が攻撃を仕掛けるんだ。以前にも同じウイルスに感染したことがあれば、ウイルスだけを攻撃する“抗体”というものを持っているから、症状は軽くすぐに治る。
ところが初めてかかった場合には抗体がないので、白血球が“サイトカイン”という攻撃物質を出して、対応するんだね。サイトカインは抗体のように、ウイルスだけを攻撃するわけでなく、自分の体も傷つけてしまうから、重症化してしまうんだよ。
だからインフルエンザに慣れていて抗体を持つ大人は症状が軽いのに、慣れていない子供たちは命にかかわることになるんだね。
※女性セブン2013年2月14日号