【マンガ紹介】文/横井周子
クールで知的なイメージとは少し違う、書店員さんたちの熱いドラマに夢中です。漫画好きにとっては宝の山のような書店のバックヤードには、汗も涙もトキメキもあるらしい?
磯谷友紀『本屋の森のあかり』(講談社)は、全国に支店を持つ大型書店・須王堂で働くあかりのお話です。上司の杜三(博識メガネ男子)に恋をしたり、同期の緑くん(クールなメガネ王子)とぶつかったりしながら、あかりが人としても、書店員としても成長していく姿が描かれます(余談ではありますが、つまり、メガネ男子好きにとってもたまらない作品です)。
あかりの片想いも書店の仕事も、とても丁寧かつ温かく描かれるこの作品。本を選び、並べ、飾るフェアの苦労や手ごたえのエピソードは特に印象的です。誰かが一生懸命考えて置かれたものかもしれないと思うと、何気なく見ていた書店の棚が普段も気になるように。
絵本のようなかわいらしさのある絵柄ですが、さまざまな個性を持ったスタッフ同士の人間関係の悩みもしっかりと描かれ、お仕事漫画としても秀逸です。
著者初連載(!)にして6年にわたる長期連載が完結したばかり。長い片想いのゆくえとともに、書店の風景をぜひ楽しんでみてください。
パワフルに笑いをとりつつ本屋を描く作品といえば忘れてはいけないのが久世番子『暴れん坊本屋さん』(新書館)。作者自身の書店員経験をもとにしたエッセイ漫画です。
一見文化的な仕事のようでいて、書店の仕事はハードな肉体労働が中心。毎日届く怒濤の新刊本と格闘し、万引犯と闘い、注文したとおりの冊数が入荷してこない「配本」に悩む。そんなおおいそがしの本屋さんの日常が、本作では爆笑ギャグに昇華されています。
魚肉ソーセージ色のペンギン風自画像だけでも笑えてしまうのですが、苦労満載のはずの店長や同僚との会話のボケ・ツッコミが最高。昨年秋に完全版が出た人気にも納得です。
裏側を知るほど、本屋さんへの愛と感謝は深まるばかり。
さて今日も、書店へGO!
※女性セブン2013年2月7日号