“チリも積もれば”の精神で、サラリーマン諸兄の皆様に今年から始めていただきたいのが、医療費関連の領収書集めである。
自営業者の人々にとって確定申告は毎年の年中行事だが、サラリーマンの場合、確定申告をする機会がほとんどないため、「医療費控除」の存在を知らずに損をしている人が相当いるはずである。
医療費控除とは、生計を一にしている親族が1年間に支出した医療費の総額から、保険などで補填された分を差し引き、その額が10万円(所得200万円未満は所得の5%)を超えた場合、超過額が所得税控除の対象になる制度である(控除対象額の上限は200万円)。
たとえば、年間課税所得が400万円として、医療費が1年間に20万円かかったとすると、医療費20万円から足切り額の10万円を引いて、残りの10万円が控除対象になる。課税所得400万円のときの所得税率は20%なので、10万円の20%にあたる2万円が控除されて懐に戻ってくるのである。
ただし、注意点がある。税理士の浦野広明氏はこういう。
「医療費控除で戻ってくる税金は、年単位の計算になります。事例のように所得400万円で1年間の医療費が20万円なら2万円戻ってきますが、2年間、10万円ずつだとゼロになります」
足切りが10万円なので、それを超えないと控除対象にならないのである。つまり、“月またぎ”ならぬ“年またぎ”の罠であり、入院などをする際は年をまたがないようにしたほうがいいということになる。
年間の医療費の合計が10万円というと、「大きな病気や怪我でもしないとそんな額にならない」と思われがちだが、決してそんなことはない。医療費としてカウントできるのは、病院や調剤薬局で支払った額だけではないのだ。
小林税理士事務所の小林拓未氏は、税控除の対象は意外に広いと指摘する。
「病院までのバスや電車代などの交通費は控除の対象になります。タクシー代についても、たとえば、骨折や高熱で病院までタクシーに乗らなければ通院が困難であるといったケースであれば、認められます」
他にも、一般の薬局で購入した市販薬の代金や、介護費用、訪問リハビリの費用なども控除の対象になる。こういった領収書を残しておいて、家族全員の分(仕送りしている親なども可)を合計すれば、年10万円を超えるのではないか。
賢い患者になれば、安くて質の良い治療が受けられるのである。
※週刊ポスト2013年2月15・22日号