先日、映画監督の大島渚さんが80歳で亡くなった。直接の死因は肺炎だが、大島さんは1996年に脳出血で倒れ、それ以来長らく闘病とリハビリを続けていたことでも知られている。生前の大島渚の生活を振り返りながら、病気になる前、なった後、なにを食べたか、食べるべきかを作家の山藤章一郎氏がつづる。
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「脳卒中予防の第一はまず太りすぎないことです」〈湘南わかば苑〉山川美紀管理栄養士は手厳しい。
脳出血で仆(たお)れて17年、車椅子生活、80歳で逝った大島渚監督も晩年のある時期、彼女の手によるメニューを口にした。さきに少し説明すると──。
脳の血管が切れるのが、脳出血。かつては溢血ともいった。血管が塞がるのが、脳梗塞。これら脳の疾患を総称して、脳卒中と呼ぶ。
「卒中」の「卒」は「卒倒の卒」。
「中」は「中毒の中」。
古来「とつぜん邪風にあたって仆れる」の意味があったという。〈The Japan Stroke Society〉という団体がある。〈Stroke〉は、水泳の腕のひと掻き、テニスやゴルフの一打、一撃。そこから、突然一撃を食らわす〈脳卒中〉に転じた。日本の呼称は、〈日本脳卒中学会〉。
6000名の専門医を擁する。体重の次に、注意すべきことは。
「運動と、腹八分目です。そして減塩。野菜中心、1日30の食材摂取をこころがけてください。
ここは高齢者向けで、1日3食1600キロカロリー、塩分8~9グラムに抑えています。若い方のカロリー総量とは違いますが、それでも、20代、30代からのカロリーの過剰摂取は万病に直結します。ある日、突然〈一撃〉が来ます」
※週刊ポスト2013年2月15・22日号