「新興宗教でも来るんだろうか」──。
のどかな農地に点在する民家。その隣の空き地に見知らぬ男たちが重機で穴を掘りはじめたと思えば、ある日忽然と立てられた2mものフェンス。中の様子は窺い知れず、何のためのものなのかどこにも説明はない。
警察がゾロゾロやってきて同じ場所を掘り返す。そこにあったのはふたつの死体──ミステリードラマの話ではない。ここは、殺害されたスイス在住の資産家、霜見誠・美重夫妻が埋められていた埼玉県久喜市内の死体遺棄現場である。
年収5億円ともいわれる敏腕ファンドマネージャーだった霜見さんが、銀座の自宅マンションから不審なワゴン車に乗り込んで姿を消したのは昨年12月。犯行グループの主犯格・渡辺剛容疑者は自殺を図ったものの、共犯の桑原隆明容疑者とともに沖縄・宮古島で逮捕された。
仕手株を巡るいざこざとも、ドバイの不動産取引に絡んだトラブルともいわれるが、詳しい犯行の目的や動機などは今後の捜査が待たれる。
ひっそりと静かな住宅地で起きた不気味で不可解な殺人事件。現場には花が供えられ、新築したばかりの隣の民家は戸を固く閉ざしひっそりと息をひそめる。もし近所でこんなことが起きたら……ゾッとせずにはいられない。
撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2013年2月15・22日号