昨年を上回るペースで流行しているインフルエンザ。予防接種で備える人も多いが、そもそも予防接種とは、ウイルスや細菌の毒性を弱めた“ワクチン”をあらかじめ投与し、そのウイルスや細菌の感染から身を守る“抗体”を体内に作っておくもの。
現在、日本で使われているワクチンにはある特徴があるという。インフルエンザに詳しい、みやがわクリニック院長の宮川浩一さんはこう解説する。
「現在国内で使われているのは“不活化ワクチン”というものです。これは、ウイルスから人間の体が“異物”として認識するために必要な部分だけを抽出し、毒性をほとんどなくしたワクチンで、安全性は高いが抗体ができにくい。
生きたウイルスを弱らせてそのまま投与する“生ワクチン”のほうが抗体はできやすいのですが、免疫力が低い人の場合だと、ワクチンを通して本当に病気に感染してしまう危険性があるので、日本ではほとんど使われていません。さらにいえば、体の中にどれだけ抗体ができるかは、個人の体質や免疫力次第。抗体ができにくい人もいれば、できたとしても充分な効果が得られない人もいるのです」
日本の場合、まずは安全を第一に考え、いわば“安全だけど効果の弱い”不活化ワクチンが使われているというのだ。
日本臨床内科医会インフルエンザ研究班副班長で、廣津医院院長の廣津伸夫さんはこう語る。
「ですから、予防接種を受けたからといって100%安全だと過信してはだめ。何を隠そう、ぼく自身も今年予防接種をしたのに、インフルエンザにかかってしまいましたからね(苦笑)」
本誌読者の中には、子供の頃、毎年インフルエンザの予防接種を受けていた人も少なくないはず。これは1962年以降、予防接種法によって3~15才までの児童・生徒に集団接種が義務づけられていたからだ。しかし、それも1994年以降は希望者への任意の個別接種へと移行している。
「インフルエンザの予防接種は、公的接種として子供に半ば強制的に打つほどの効果はないと判断され、今後はやめましょうということになりました」(厚生労働省)
ただし、効果が全くないわけではない。日本臨床内科医会の研究によれば、予防接種にどれだけの効果があるのかを示す“有効率”は、最新のデータ(2010~2011年)でたったの20%ほどでしかないのだ。
この20%という数字は、発症を免れることができると思われる人の割合。だが、仮に感染してしまったとしても、予防接種には「重症化を防ぐ」という効果があるのだ。これは抗体が持つ「交差反応」という現象で、変異によるウイルスのマイナーチェンジが起きたとしても、ある程度型が近いものに対しては、体内にできた抗体が働いてくれるのだ。
「予防接種をしておけば、仮にインフルエンザにかかったとしても、軽い症状で済むことが多い。高熱が胎児に影響を及ぼしかねない妊婦さんや、他に疾患を持っていて高熱が命にかかわるような人は、積極的に受けることをおすすめします」(廣津さん)
※女性セブン2013年2月14日号