春を告げる野菜といえば菜の花を思い浮かべるのではないだろうか。今回、“菜の花”のおいしい食べ方を“ばぁば”こと、料理研究家の鈴木登紀子さん(89才)が紹介する。
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食べておいしいのはかたいつぼみの間だけ。もち味のほろりとした苦みは茎の部分に多いのですが、ゆでるとある程度薄れて、独特の風味が残ります。足の早い野菜ですから、保存する場合はゆでてから冷蔵庫へお入れになることをおすすめします。また、菜の花に限らず、葉野菜は買ってきたらすぐに下処理をしておきましょう。何度かに分けて使えますし、お料理にもすぐ取りかかることができますよ。
菜の花は、ゆですぎないことが肝要です。輪ゴムで束ねてあるまま、根元に近いところから2~3cmほど切り落とし、束をほどいて水洗いします。
たっぷりの熱湯に塩を少量加えて、水を切った菜の花を4~5本ずつゆでます。こうしますと、お湯の煮立ちを落とさずに、ゆで加減もよく見えますし、火の通りも均一になります。ゆで上がったら冷水に取り、水の中で根元を持って振りながら揃え、水けをよく絞ります。
菜の花は、おひたしや和えもの、あるいは炒めものやパスタなど、豊富な使い途がありますが、ことにからしじょうゆとの相性がたいそうよろしいの。からしじょうゆともみのりで和える「磯の香和え」は、菜の花のほろ苦さと香り、歯触りが心地よい、早春ならではのごちそう。ばぁばの大のお気に入りです。
それから「菜種椀」。作り方はとっても簡単。ゆでた菜の花があれば、あっという間に作れるお椀です。
菜の花12本(4人分)はゆでて冷水に取り、水けをよく絞って長さを半分に切ります。
ボウルに卵1個を溶きほぐして塩少量を入れ、菜の花をくぐらせながら熱湯にひとつずつ落とし入れ、卵の色が変わったら穴あきお玉ですくって、布巾を敷いたざるに取ります。
お椀に紅白のかまぼこひと切れずつと菜の花を盛ります。これにだし汁4カップに塩小さじ1と1/2、薄口しょうゆと酒各小さじ1を加えて煮立てた汁を張ってできあがりです。
ほら、みなさまの食卓にも、小さい可憐な春がやってまいりましたでしょう?
※女性セブン2013年2月14日号