中国では宴会などで食べ残して廃棄される料理が毎年5000万トンにも達していることが分かった。このため、中国共産党の最高指導者、習近平党総書記は1月下旬、「浪費は恥ずべき思想」として改善を指示する異例の通達を出すとともに、市民団体を中心に「光盤運動(食べ残し撲滅運動)」が拡大している。国営新華社通信発行の時事週刊誌「瞭望」が伝えた。
中国では宴会などでお客さんを招待する際、食べきれないほどの料理をテーブルに広げることがホスト側のステータスになっている。
このため、北京市内のレストランでは毎朝、ゴミ集積所には大量の残飯が捨てられ、残飯をねらって多くの野良犬やカラスが集まってきて、通勤、通学の市民らが襲われ、けがをするという事故が絶えないという。
大量の残飯が社会問題化していることから、中国農業省が中国全土の食べ残しの量を試算したところ、中国の穀物生産量の8%、野菜の総生産量の20%をも占めていることが明らかになった。同省の張天佐・農産品加工局長は「まさに驚くべき量だ。食糧節約は国家戦略上、極めて重要であり、中国政府は節約を奨励するよう国民に指示しなければならない」と指摘している。
このような食べ残しは富裕層ばかりでなく、衣食住に質素だとみられている大学生にも及んでいる。北京の大学連合会の調べでは、全国の大学生も食事の3分の1を残しており、その量は毎年1000万人を養えるほどだという。
中国政府で貧困者数を減らすことを目的とする担当部署「貧困者支援開発指導小組(グループ)」によると、中国では2011年、年間の収入が2300元(3万3580円)以下の貧困人口は農村人口の13.4%を占める1億2800万人にも上る。これは全人口の10分の1にも達する。
習近平・党総書記はこうした状況を踏まえ、1月下旬、新華社の配信資料の中で、食べ残しを改善するよう指示。習氏は「中国にはまだ多くの貧困層がおり、人々は各種の浪費に心を痛めている」としたうえで、「節約は立派な行為であり、浪費は恥ずべき思想であることを宣伝しなくてはならない」と強調した。
人民日報は1月下旬、北京の市民団体が「皿の料理を食べ尽くす」という「光盤運動」を展開し、パンフレットを配ったり、レストランにポスターを貼らしてもらうなどの活動を開始したと伝えている。