大阪市立桜宮高での高校2年生のバスケットボール主将の自殺を機に、全国で相次ぎ発覚している体罰事件。日本代表を含む15人の柔道女子選手による告発で、女子柔道界でも体罰が行われていたことが明らかになった。
千葉大学教育学部の藤川大祐教授はこう言う。
「体罰を振るう教師は昔に比べればずいぶん減ったと思います。ただ、運動部ではいまだに“愛情があれば何をやってもいい”という考え方が残っている。耐えて頑張った生徒たちは“愛情のこもった厳しい指導で鍛えてもらった”“精神力が身についた”などと感謝を口にしますし、保護者もまた、そういう指導方法を容認してしまうことがあるんです」
いうまでもなく教師は生徒の鑑だ。体罰を受け、あるいは容認する環境で育てられた子供たちが、やがて体罰を肯定する大人に育っていく可能性は否定できない。柔道女子日本代表監督を辞任した園田隆二氏もまた、その轍を踏んでしまったのでないだろうか。
藤川氏はまた、 「体罰に耐えて強くなることのできる生徒はほんの一部であり、その一方には、耐えられずに心に傷を負う生徒たちが多数いることを忘れてはいけません」とも指摘する。
桜宮高校のバスケ部主将の自殺という悲劇が念頭にあることは言うまでもない。
公立小学校の教師時代に『百ます計算』などの指導方法を導入して注目され、立命館小学校副校長などを歴任した後、現在、大阪府教育委員会委員長を務めている陰山英男氏は、教師たちが「指導力の未熟さ」をまず認識すべきだと語る。
「最先端のスポーツ指導では、当然のことながら、体罰で子供たちを動かそうとすることは有効と考えられていません。スポーツ科学に基づいたトレーニング法が取り入れられ、むしろ子供たちのストレスを取り除くことが重要とされています。しかし学校の部活動の指導法はものすごく遅れている。まずはそのことを自覚し、最先端のスポーツ指導にならうことが大切です。“体罰があるのが当たり前”という風土を変えないかぎり、いつまでも体罰はなくなりません」
※女性セブン2013年2月21日号