国際情報

中韓が東シナ海の暗礁めぐって争奪戦 不法漁業で双方に死者

 尖閣諸島と竹島で日本の領土を侵犯する中国と韓国。だが、両国は東シナ海にある小さな暗礁をめぐって争奪戦を繰り広げており、不法漁業で双方に“戦死者”まで出ている。産経新聞ソウル駐在特別記者の黒田勝弘氏がレポートする。

 * * *
 韓国の中国への傾斜が目立つ。日中の激しい対立のなか朴槿恵・韓国の“変身”は大いに気になる。

 日本にとってショックだったのは、朴次期大統領が当選直後の各国大使との接見で、米大使に次ぎ中国大使と会ったことだ。韓中の国交正常化は1992年だが、金泳三以来、親北・左派政権だったあの盧武鉉を含め最近の李明博まで、いつも米国の次は日本だった。

 中国傾斜の背景は簡単だ。中国の国力が増大して、相対的に日本の地位が低下したからだ。GDP(経済規模)で日本が中国に追い抜かれた(2010年)ことが大きく作用している。そのころから国名を挙げる順序は「米日中」ではなく「米中日」になった。今や韓国では、世界は米中で動くという「G2」論が幅を利かせている。

 この韓国の“変わり身”の早さは、大陸にぶら下がった半島国家の地政学的環境からくる身の処し方であろう。

 しかし、中国傾斜といっても歴史的経験からして、やはり国境を接する中国は「恐い」。首都ソウルは元、明、清、共産中国までその軍事力で踏みにじられた歴史を持つ(朝鮮出兵の秀吉軍に対抗し派兵された明軍も相当な乱暴狼藉をはたらいた)。

 したがって中国との領土・領海問題も日本以上に複雑で厳しい。陸では中朝国境地帯の領土問題が波乱含みだ。古代・高句麗の歴史は中国史か韓国史かという「歴史領土問題」は将来、間違いなく現実の領土紛争に発展するだろう。

 海ではすでにガチンコの衝突が始まっている。漁業紛争では“戦死者”まで出た。不法操業の中国漁船と韓国海洋警察が死闘を展開中だ。一昨年は海洋警察隊員が中国漁船員に刺されて死亡、昨年は中国漁船員が海洋警察のゴム弾で死亡した。

 南北が軍事衝突している「海の火薬庫」ソウル北西の黄海はワタリガニの宝庫でもある。ここにも外貨がほしい北朝鮮から操業権を買い取った中国の大漁船団が出漁。韓国は中朝を相手に両面作戦を強いられている。

 南部の済州島沖の海中暗礁「離於島」(中国名称は「蘇岩礁」)は韓中双方の領海外だが、互いに「自国のEEZ(排他的経済水域)内にある水中暗礁」と主張。付近に海上ヘリポートを設置し先手を打った韓国に対し、中国は常時、抗議の監視船を航行させ威嚇している。

 中国は昨年、自国領と主張する海域に対し、衛星を利用したリモートセンシング監視を行なうことを決定し、その海域に離於島が含まれていたため韓国側は猛反発した。

 離於島周辺海域では韓中のEEZが重なる。その際は中間線で“支配水域”を分けるのが国際慣例だ。しかしそうなると離於島が韓国側に取り込まれるため、中国は中間線画定交渉を拒否。中間線を無視して勝手に漁船を繰り出している。

※SAPIO2013年3月号

関連記事

トピックス

チャミスルを片手に、警備員に絡む、アジア系の外国人女性
【渋谷ハロウィン】「日本語で叫ばれてもわからない」下半身丸出しで「ギャー!」嬌声を上げる外国人女性も…深夜の道玄坂で起こっていた「飲酒狼藉」
NEWSポストセブン
リハビリに励まれる美智子さま(撮影/JMPA)
「必ず立ち上がる」美智子さま、懸命リハビリは異例の“昼夜2部制” 仙洞御所バリアフリー工事では備えが足りなかった…宮内庁は痛恨の極み
女性セブン
あごひげを生やしワイルドな姿の大野智
《近況スクープ》大野智、「両肩にタトゥー」の衝撃姿 嵐再始動への気運高まるなか、示した“アーティストの魂” 
女性セブン
天海のそばにはいつも家族の存在があった
《お兄様の妹に生まれてよかった》天海祐希、2才年上の最愛の兄との別れ 下町らしいチャキチャキした話し方やしぐさは「兄の影響なの」
女性セブン
OZworldの出没に若者が殺到した
《厳戒態勢の渋谷ハロウィン》「マジで両方揉まれました」と被害打ち明ける女性…「有名ラッパー」登場で一触即発の乱闘騒ぎも
NEWSポストセブン
川村
【北海道・男子大学生死亡】脚には「龍のタトゥーシール」…逮捕された川村葉音容疑者(20)の同級生が明かす「暴力的側面」と「恋愛への執着心」
NEWSポストセブン
満を持してアメリカへ(写真/共同通信社)
アメリカ進出のゆりやんレトリィバァ「渡辺直美超えの存在」へ 流暢な英語でボケ倒し、すでに「アメリカナイズされた笑い」への対応万全
週刊ポスト
ライブペインティングでは模様を切り抜いた型紙にスプレーを拭きかけられた佳子さま(2024年10月26日、佐賀県基山町。撮影/JMPA)
佳子さま、今年2回目の佐賀訪問でも弾けた“笑顔の交流” スプレーでのライブペインティングでは「わぁきれい!うまくできました!」 
女性セブン
傷害致死容疑などで逮捕された八木原亜麻容疑者(20)、川村葉音容疑者(20)、(右はインスタグラムより)
【北海道男子大学生死亡】逮捕された交際相手の八木原亜麻容疑者(20)が高校時代に起こしていたトラブル「友達の机を何かで『死ね』って削って…」 被害男性は中学時代の部活先輩
NEWSポストセブン
木曽路が“出禁”処分に(本人のXより)
《胸丸出しショット投稿で出禁処分》「許されることのない不適切な行為」しゃぶしゃぶチェーン店『木曽路』が投稿女性に「来店禁止通告」していた
NEWSポストセブン
東京・渋谷区にある超名門・慶應義塾幼稚舎
《独占スクープ》慶應幼稚舎に激震!現役児童の父が告白「現役教員らが絡んだ金とコネの入学ルート」、“お受験のフィクサー”に2000万円 
女性セブン
佳子さまの耳元で光る藍色のイヤリング
佳子さまが着用した2640円のイヤリングが驚愕の売れ行き「通常の50倍は売れています」 地方公務で地元の名産品を身につける心遣い
週刊ポスト