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フリーランスは「時は金なり」を意識 テープ起こしはするな

43歳でオーダーした学ラン。裏地は手染めの龍虎。おしなべてアツイモノが好き

「分類王」や「全国キャンディーズ連盟」の代表として知られる著述家・編集者の石黒謙吾さん(51)これまで約200冊の書籍を作ってきました。このたび、いかに能動的に動くか――をこれまでの体験から綴った同書『7つの動詞で自分を動かす ~言い訳しない人生の思考法』(実業之日本社)を上梓しました。同書に書かれた言葉がネット上で多くの共感を集めています。

それは、以下の言葉です

「死ぬ間際に『ああ、もっと稼いでおけば良かった』という人はいない。『もっと人の役に立ちたかった』『もっとあの人にやさしくしたかった』 必ずそんな思いがよぎるものだ」 

過去2回にわたって「50歳までフリーランスで生き残る方法」を聞いてきましたが、今回は「いかにして仕事を取っていくか」「“時は金なり”の意識をいかに持つか」について聞きました。

――同世代の他の人の働き方を教えてください。

石黒:たとえば、昔よく『ぴあ』の遊園地ムックを丸々受けてた人は、それがきっかけでジェットコースター専門家になったりしていましたよね。社員として編集者をやっていた人が会社を辞めて自分でフリーペーパーを立ち上げた人もいましたよ。自分のやりたいネタを版元にぶつけて、正社員であろうが外注であろうが、媒体を作ってしまうというのはなんといっても勢いある。これは完全に能動的ですよね。

 とにかく言いたいのは、能動的にやりたい企画を誰かに持っていきましょう、ということ。そうしないとマズいです。もし持って行ってその企画がウケなかったとしても、その相手に「私はこれが好きです」と伝えるか伝えないかでその後が全然違います。「そういえば彼はこれが好きって言ってたな……」なんてことでまた別の機会に連絡があるかもしれない。飲み会で「ほかの人が知らないこんなことに興味ありますよ」を言うのも有効です。

――つまり、言うのはタダだから言うべし、ということですね。

 言わないと、何も飛び出しがなく、誰の目にも届かない。それは行き着くところ、フリーでやるのがしんどくなるのですね。フリーでやる場合は、タイムイズマネーという感覚を自分の中に染み込ませなくてはいけません。金の亡者になるんじゃなくて、コスト感覚を持ちましょうと。

僕は高校に入って以降、親の金はもらっていません。高校の時は、「1時間いくら」みたいな考えはしていませんでしたが、キャンディーズの追っかけで2年で全国100ヶ所回ったのは全部バイトでまかなってました。その後、東京に来て驚異的に忙しい名曲喫茶でバイトをしていた時は、一般的に時給が通常530円くらいのところを600円ももらえました。

 その頃、芸大3浪までしていた僕はドロップアウトして、人間がくさっていました。そしてもちろん自腹でジャーナリスト専門学校へ行くと決めたのですが、行くときになって授業が1時間あたり800円かかることに気付いたんですね。「オレは600円しか稼げない。いくら稼いでも1時間分の学費を稼げない!」と愕然としました。それなので、人生で唯一、学校を一切さぼりませんでした(笑)。

――その段階ですでに「タイムイズマネー」の考えはあったってことですね。

この頃からフリー根性は目覚めていたのかもしれませんね。あくせく稼いだお金をここに払っているんだから何かを学習しなくては損する――という感覚が芽生えました。逆に、仕事場でも、一切サボりませんでした。「ここで同じ時間で同じお金もらうのなら何か少しでも実にしないと」とも。

名曲喫茶では、仕込みから何からやれることを全部やらなくてはいけませんし、覚えなくては損だとも思いました。愚直にそこにあることを真面目にやることが、マイナスになることは絶対にありません。たとえ掃除でも「ここで工夫したら、店は絶対に良くなるはず」ということを考えるようになったのです。

というか、そうしないと楽しくないでしょ? 上司の目云々よりも、楽しそうなことをやっていると、また仕事を頼んでもらえるんです。作家の村上春樹さんって日本中の編集者が一緒に仕事をしたいのに、数人としか仕事しないでしょ? もちろんそのレベルではないけど、多くの人が「あいつと仕事したい」と思ってくれるには高いパフォーマンスを出すことに加え、楽しそうにやることも大事なんじゃないでしょうか。

――ライターにとっての「タイムイズマネー」ってどういうことですか?

石黒:たとえば、純粋にフリーになってから僕は、絶対にテープ起こしはしませんでした。ドシロウトはしかたないとして、仕事を初めて2~3年目を越えたらもうしないでいいのではないでしょうか。

1時間分のインタビューを1万円で外注すればいいじゃないですか。1時間分の取材をテープ起こししようとすれば、5時間くらいかかるわけです。これは時給2000円なワケですが、フリーでそれくらいでさえ稼げないんだったら、そもそも仕事に向いていないと考えないと(笑)。その5時間で本読むほうが結果的にトクですよ。人生として捉えれば。

自分の時間というものは実に貴重なものです。それを考えないでテープ起こしをするのはもったいない。テープ起こしをするくらいだったらその5時間で本読むほうが結果的にトクですよ。人生として捉えれば。

録音するのはいいですが、メモで充分じゃないですか? 分からないところだけ聞き直す、とかで大丈夫ですよ。そもそも、取材中にメモで全体を構成できてない時点でアウトですし。

【1日3万円稼ぐと決めたとしても、稼がない日があってもいい】

だから僕が言いたいのは「テープお越しを本業のライターがやってはいかん!」ということです。本当にその時間を時給に直してみてくださいよ! 外注したら1時間のテープ起こしが1万円だとしたら1時間2000円。

あなたが1日に3万円稼いだら月に20日間働けば60万円で、なかなかの所得ですよね。1日10時間働くとした場合、時給は3000円です。それをもっと低い時給にしかならない2000円のテープ起こしに使ってはもったいない。だったら1万円を外注して、その5時間で15000円を稼ぐと考えたい。自分でやることで差額の5000円を捨てていることになりますからね。

僕も金にならない時間は確かに使っていますよ。1円も生まない日はしょっちゅうありますが、そんな日は企画に昇華させるつもりで誠実に人と応対し、実直に事務作業などする。「昨日と今日は10000円分の仕事しかできなかったけど、明日は70000円稼ぐ日にしよう! そうすれば平均30000円確保!」ということで、空き時間にガガッと企画書を作ったりするわけです。

――書籍の中で、かなり厳しめの意見がありましたよね。ダメなフリーの人の仕事術について。やたらと他人の知り合いを紹介してもらいたがる人。

石黒:人頼りじゃなくて、とりあえず自分で電話しましょうよ! すぐに「○○さんを紹介してください」と言う人は見込み薄し、です(笑)。マスコミでちゃんと仕事をしている人って、モノゴト分かっている人多いから、紹介であろうがなかろうが、ある程度仕事ができる人ならぱっと接してくれるんですよ。それなのに「○○さんを紹介してください」と安易に言う人は逆の立場が想像できない「ある程度の仕事ができない人」だとさえ思われてしまう。

 ましてや「この企画をやりたいんですが、いい版元を教えてください!」なんて言ってくる人はあまりにも手を抜き過ぎ。その考えを改めないと生き残れないですよと言いたい。そういう発想の人は緩やかに消えていくものです。

電話番号なんていくらでも調べられるんだから、知っていそうな人に安易に聞くのではなく、自ら「動く」ことを心がけてくださいね。

 話はちょっと飛びますが、コラムニストの石原壮一郎さんを見ていて、頭が下がるのは、SNSなどで様々な人とマメにやり取りしているところ。僕もよくマメと言われますが、石原さんは数段ちゃんとしてます。ああいう誠実な部分をしっかり持ちつつ能動的でないと、がっついてる人になるのでご注意を。

【石黒謙吾(いしぐろ・けんご)】
著述家・編集者・分類王。1961年金沢市生まれ。これまでプロデュース・編集した書籍は200冊以上。著書に『2択思考』『盲導犬クイールの一生』『ダジャレヌーヴォー』など。プロデュースした書籍には『ザ・マン盆栽』(パラダイス山元)、『ナガオカケンメイの考え』(ナガオカケンメイ)、『ジワジワ来る○○』(片岡K)など。全国キャンディーズ連盟(全キャン連)代表。雑誌編集者時代に、雑誌における女子大生の呼称・「クン」を確立させる。

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