プロ野球もキャンプ入りし、盛り上がりを見せているが、「国民的スポーツ」と称されるプロ野球で起こった「大事件」の裏側を、当時を知る人々の証言を元に明らかにしよう。
1989年の日本シリーズは、近鉄-巨人の対戦。3戦目を任された近鉄の先発・加藤哲郎は、6回3分の1を無失点に抑え、巨人は3連敗で崖っぷちに立った。
お立ち台に上がった勝利投手の加藤は、今日の巨人はロッテより弱いですか? とマイクを向けられ、素直にこう答えた。
「シーズンの方が大変だった。なんてことはなかった」
これがマズかった。翌日のスポーツ紙には「加藤、巨人はロッテより弱い」の大見出しが躍ったのだ。
中でも発奮したのが巨人・駒田徳広。このシリーズで打率.522、6打点という獅子奮迅の活躍を見せ、最終戦では先制弾。マウンド上の加藤に「バ~カ!」と叫び溜飲を下げた。
3連敗から4連勝で日本一の原動力になった駒田。実は3戦目終了後、ロッカーに新聞記事を貼り、「このまま終われるか」と自らを奮い立たせていた。ちなみに一方の加藤は後日、本誌にこう語っている。
「アナウンサーの誘導尋問に乗った僕も悪いけど、3連敗したチームに“強い”というのも失礼でしょう。そもそも近鉄は不調で、シリーズの流れはああなっていたと思います。あの後、1週間に300通ほどのファンレターが来ましたが、3分の2が批判で、中にはカミソリの入ったものもありました。でも、いい経験だったと思います」
※週刊ポスト2013年2月15・22日号