料理にこだわる人は少なくないが、その後片付け、つまり洗い物にこだわる人は少ないかもしれない…。「美しい心は美しい手の動きから」と話すのは『きょうの料理』『あさイチ』(ともにNHK)でお馴染みの料理研究家・鈴木登紀子さん(89才)。“ばぁば”の愛称で親しまれる鈴木さんが、洗い物の極意を伝授する。
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漆器などの上等な塗りものは最初に、そして単独で洗います。ですから、お盆にのせて下げた食器は、いきなり洗い桶や流しの中につけず、ひとまず調理台の上にでも置きましょう。そして「これはお大事よ」というものからひとつひとつ洗っていきます。
漆器は洗剤はけっして使わずに、やわらかい布を用いてぬるま湯でやさしく、手早く洗います。長く水につけておきますと、塗りが傷みますからね。
洗ったものは、二枚重ねのガーゼの手ぬぐいで二度拭きをします。昔は二度目は「モミ」という絹で拭いたものです。半日ほど置いてからしまってくださいね。
塗りものを拭くときは、1枚の布巾の真ん中に器を置いて、布巾の両端で器を包むようにして拭きますと、手の脂や指紋がつくことはなく、また、落とすこともありませんわね。
「目は口ほどにものを言う」と申しますが、手も同じように心を伝えます。どんなにお手入れをしても、のろのろ、あるいは荒々しく動く手からは、美しさも魅力も感じられませんよ。
※女性セブン2013年2月21日号