ピークが過ぎたとはいえ、いまだに近畿地方を中心に猛威を振るっているインフルエンザ。その他、ノロウイルス、中国の大気汚染、花粉症……と、なにかと汚れた空気対策にマスクが手放せない季節。
そんな中、身の回りに置くだけでウイルスや細菌などを寄せ付けないと謳う「空間除菌商品」が飛ぶように売れている。都内にあるドラッグストアチェーンの店員が話す。
「特に首に掛けるだけの携帯用タイプは、棚に並べたそばから売れていく状態。販売メーカーによっては欠品になっており、次回の入荷が決まっていない商品もあります」
最近はプロ野球・横浜DeNAの中畑清監督がインフルエンザ予防で選手に携帯を義務づけたり、ダウンタウンの浜田雅功さんが首からぶら下げて番組に出演してネット上で話題になったりと、著名人らによる“宣伝効果”も相まって、認知度は日増しに高まっている。
空間除菌商品のパワーは、概ね二酸化塩素によるもの。日常生活では馴染みが薄いが、プールの水の殺菌に使われる消毒剤の成分と聞けば、鼻にツンと来る臭いの記憶とともに納得する人も多いはず。
果たして、二酸化塩素の除菌効果とはいかほどのものなのか。日本防菌防学会会長の高麗寛紀氏(徳島大学名誉教授)に聞いてみた。
「強い酸化力を持つ化合物で、ウイルスや細菌の原因物質を酸化分解する作用があります。また、大気中に放出される二酸化塩素ガスは、気中濃度によっては消臭効果が高いため、大衆が集まる施設やトイレなどで使用されることが多いのです」
だが、使用環境によって効果がまちまちなのが現状で、実際にインフルエンザやノロウイルスなど特定の感染症にどの程度の予防効果があるかは正確に分かっていない。2010年に市販の空間除菌商品(据置型)のテストを行った国民生活センターの担当者が話す。
「商品によっては二酸化塩素の放散がわずかしか認められないものもありましたし、使用する部屋の広さや環境によっても違います。それは屋外で使う携帯用ならなおさら。なによりも、効果のある濃度になったときに人に対する健康への影響はどうなのか、安全性の問題も不明確でした」
前出の高麗氏も、使用上の注意点を挙げる。
「あまりに濃度が高いと、付近にある色ものの繊維が漂白されてしまったり、貴金属が腐食したりする危険性があります。また、二酸化塩素の商品を鼻先で直接吸い込むと、粘膜を刺激したり、肺に入れば気管支炎やぜんそくを引き起こすこともあります。特にお子さんの使用には気をつけたいですね」
耳にタコかもしれないが、手洗い・うがいといった自己予防策を徹底しなければ、除菌商品の効果も薄れてしまうのは当然だ。