トラブル続きの空と違い、開業以来49年間も無事故を続ける陸の新幹線。そんな世界に誇る日本の技術の粋を集めた新型車両「N700A」(東海道新幹線)がお目見えした。
だが、見た目だけでは何が変わったのかまったく分からない。そこで本誌『週刊ポスト』は、鉄道マニア界のカリスマといわれる向谷実氏(実はこの人、フュージョンバンド「カシオペア」の元キーボード奏者)とともに2月上旬、営業運行前に行なわれた試乗会へと向かった。
東京駅で待ち合わせた向谷氏は、ホームで入線を待つ時から「試乗車って特別な人間だけが乗れる列車ですよ」と興奮気味。これがマニアの醍醐味なのか、新幹線に乗り込むとテンションはさらにヒートアップする。
「N700A」最大の目玉は史上初となる新型ブレーキと自動走行システム。試乗後間もなく自動走行に入ると、「たしかに静かですね。いま定速ノッチ入りました。う~ん、10段くらいかなあ。アッ、11段に上がった。ATCのパターンを組み込んでランカーブを自動で……」と止まらぬ解説を披露する向谷氏。
しかし、悲しいかな門外漢には理解不能の単語が並ぶ。さらに車内を歩き回り、ドアの開閉表示灯が新たに設置されたことや、普通車両のシート頭部がグリーン車と同じくサポートされた点など、カリスマは細かい内装の変化を次々と見つけていく。
ちなみに「N700A」の“A”は「Advanced」=「進化」の意味。「今回採用された技術の数々は革命的ともいえますが、停車はいまも、停車駅進入後に停車位置手前で、時速15㌔以下になった時点から手動操作に。数㌢の誤差で停車位置にピタリと停めるのですから神業です」(向谷氏)
とにもかくにも素人に分かったのは乗り心地が良くなったこと。百聞は一見にしかず。まずは実際に乗車していただくのが一番かもしれない。
撮影■太田真三
※週刊ポスト2013年3月1日号