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大阪西成の蚕カフェに見る商売のヒント コラムニストが論考

 カフェに特色をプラスした「○○カフェ」がブームだ。大阪市西成区には珍しい昆虫をテーマにしたお店も。テーマカフェから大人力コラムニストの石原壮一郎氏がビジネスヒントを探る。

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「誰もやったことがない新しくて斬新で大胆な業態」というのは、思いついたほうは嬉しくても、狙いや魅力が伝わりづらくてたいてい失敗します。その点、ちょうどいいのが、カフェというお馴染みの業態に目新しい特徴を加えた「○○カフェ」。メイドカフェや猫カフェはすっかり定着しましたが、カフェはまだまだ無限の可能性を持っています。

 新たなビジネスのヒントがもぞもぞとうごめいていそうなのが、ネットで話題を呼んでいる大阪市西成区の「おかいこさまカフェ」。お店では元気いっぱいの22匹のカイコが、日常に疲れたお客さんを癒そうと待ちかまえてくれています。常連客のひとりが「生活に身近な絹を生む養蚕文化に触れるプロジェクト」として企画したとか。

 着目したいのは、カフェという響きには不似合いで、けっして「人を癒す」という仕事が向いていると思えないカイコを雇ったところ。単に面白がったり気持ち悪がったりしていないで、何かを学んで何かにつなげてしまうのが大人の気合いです。

 カイコがありなら、虫つながりで言うと、カブトムシカフェやクワガタカフェだって可能なはず。濃いマニアがいる領域を狙うとすると、蝶の標本カフェや、あるいは珍しい蝶が飛び回っている熱帯カフェもよさそうです。冷たい飲み物がよく売れそうだし。カマキリの卵カフェは……これはさすがにインパクトが強すぎるかもしれませんね。

 言わずもがなですが、「カイコ」といっても仕事の解雇とは関係ありません。ただ、偶然なんですけど、ちょっとギクッとはします。あえて意識して、ダジャレ的なイメージの広がりを狙ってみるのも一興。「おかいこさまカフェ」の近くに、区が主体となり、揚げパンやカレーシチューなどの学校給食的なメニューを取り揃えて、しかも仕事も探せる「きゅうしょくカフェ」をオープンさせるのはどうでしょうか。区長、ぜひご検討ください。

「おかいこさまカフェ」ではカイコを食べるわけではありませんが、ウリにするメニューで意外性を演出する手もあります。ローカルフードブームも意識しつつ、好きな人にはたまらないとなると「いぶりがっこカフェ」や「鮒寿司カフェ」なんて面白いかも。

 ちなみに、カフェという響きに十分に似合うオシャレでメジャーな食べ物ではありますが、先日都内某所で行なわれた一日限定の「伊勢うどんカフェ」は、押すな押すなの大盛況でした。いやまあ、行なわれたというか、私の主催だったんですけど。手前ミソですいません。

 「おかいこさまカフェ」は、カイコが繭になる2月末までの期間限定。繭になったらカフェを解雇されるわけですね……。そしてその後は……。いろいろ考えすぎると癒されるどころではなくないそうですけど、一心不乱に桑の葉をかじる姿を見つめることで、今を精いっぱい生きろというメッセージを受け取ることができるに違いありません。

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