大きな被害と犠牲者を出した東日本大震災の発生から、もうすぐ2年が経とうとしており、被災地でも着実に復興が進んでいる。しかし、いまだ“復興”に至らないものがある。
東京にあるカラオケスナックで店主をつとめる“パパ”(“ママ”の男性版・65歳)は、震災から今日に至る店の変化を打ち明けた。
「うちの店はサザンオールスターズのファンが結構来てね、よく歌ってくれてたんです。特に『TSUNAMI』は凄く盛り上がって、お客さんのリクエストも多かった。ただ、震災があってからは、誰も口には出さないけど、不謹慎だからって『TSUNAMI』を歌わなくなってね。
サザンを歌いたくてスナックに来ていたお客さんの中には、来なくなっちゃった人もいる。もうすぐ2年経つけど、僕自身もまだ歌えない。本当に2年間、うちの店であの曲は流れなかった」
たしかに震災直後は、水没した町を描いた映画『崖の上のポニョ』が不謹慎だ、という声がネット上で吹き上がるなど、津波という題材自体がタブー視される風潮があった。大規模な水攻めシーンが描かれた映画『のぼうの城』も公開が延期された(昨年11月に公開)。
『TSUNAMI』も同様に、タブー視されてきたようで、いまだ楽しくカラオケで歌うのに抵抗がある人も多いようだ。
「あの曲をまた気持よく歌えるようになった時が、本当の意味で復興した、って喜べる日なんじゃないかな」(前出・パパ)