新鮮な刺身に添えられる白髪大根の“つま”。実は、ここには大きな誤解があるというのは、NHKの『きょうの料理』『あさイチ』でお馴染みの料理研究家・鈴木登紀子さん(89才)。“ばぁば”の愛称で親しまれる鈴木さんが、刺身の脇役の役目について解説する。
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お刺身に欠かせないのが、「けん」「つま」「辛み」の3種です。「けん」は栄養のバランスをとったり、口直しになったり、消化を助けたりする役目を果たします。
代表的なのが白髪大根。大根を薄くかつらむきにして端からクルクルと巻き、小口からごく細く刻んだものです。パックのお刺身にも必ず添えられていますでしょう?
これをよく「つま」と呼ぶのを聞きますが、「けん」が正式な名称です。ほかにもきゅうりの小口切りや白髪ねぎ、わかめなどが「けん」として使われます。季節によっては、ななめせん切りにして冷水によくさらして水けを切ったみょうがもよろしいの。
とにかく、見た目に爽やかで清々しく、歯触りシャキッ、舌触りはサッパリしているのが「けん」の条件です。
「つま」は、お刺身に風味と彩りを添え、薬味の役割も担います。防風、貝割菜、花穂じそ、あさつき、青じそなどを使います。
「辛み」は、お刺身といえばいわずもがな、わさびでしょうか。ただ、しめ鯖や貝のお刺身には、ばぁばは辛子をおすすめします。つーんと鼻に抜ける辛み、ほろりとした苦みが粋で、キリッと味を締めてくれます。
私が子供の頃は、まぐろも辛子でいただいたものです。わさび、辛子ともに食中毒を予防する役目もあります。つくづく、昔の人はよく考えたものですわね。
この季節、ピンク色の皮目をキラキラと輝かせながら、鯛が水揚げされます。その美しい姿に、今だけ「桜鯛」と呼ばれるのです。
大変なごちそうですが、大切なお客さまのおもてなしにはぴったり。刺身用のさくをお買い求めになりましたら、必ずまな板に濡れ布巾を広げて湿らせ、余分な水けを拭いてから、包丁を入れてください。
乾いたままのまな板では、身がくっついてしまいますよ。
※女性セブン2013年2月28日号