中村勘三郎さん(享年57才)、市川團十郎さん(享年66才)の2大看板を立て続けに失い大激震が走る歌舞伎界。4月から始まる東京・新・歌舞伎座の公演への影響も心配されているが、今後どうなっていくのだろうか。
二代目市川猿之助の甥で、歌舞伎評論家の喜熨斗勝(きのし・まさる)さんはこう語る。
「現在、人気・実力ともに兼ね備えた役者は、尾上菊五郎さん(70才)や松本幸四郎さん(70才)・中村吉右衛門さん(68才)兄弟とされ、歌舞伎界をけん引していくことが予想されます。また、上方歌舞伎には、人間国宝である坂田藤十郎さん(81才)がいます。そのかたたちが中心となって、若手をまとめていくようになるでしょう」
集客だけを考えれば、人気のある若手役者や、跡継ぎたちを座頭に据えた公演を次々に打っていく策も考えられる。
しかし、伝統芸能の継承という点では彼らに下積みをさせることも重要だ。喜熨斗さんは次のように提言する。
「團十郎さん、勘三郎さんのおふたりが相次いで倒れたのは、このところ歌舞伎の劇場公演スケジュールが過密になっていることも影響しています。ふたりは特に人気スターだったので仕事が集中してしまったのです。もう一度、芸の継承のあり方や、公演の運営について見直す時期にきているのではないでしょうか」
歌舞伎は、江戸時代には風紀を乱すという理由で何度も弾圧にあい、戦後には一時、GHQによる歌舞伎禁止令が出され、その都度、存亡の危機に立たされてきた。それでも400年続く伝統を守ってきたのは、協力してそうした危機を乗り越えてきたからだ。その力が今再び試されようとしている。
※女性セブン2013年2月28日号