50代なのに30代にしか見えないドクター・南雲吉則先生が、女性セブン読者の健康に関する相談に回答するこのコーナー。今回は普段から愛飲している「ごぼう茶」について回答する。
【相談】
ごぼう茶を飲み始めたら、便通も体調もよくなり、やせた気もします。ところで先生はいつから飲まれているのですか? ごぼう茶との出合いや効能などについて知りたいです。(ゆたんぽ・37才・会社員)
【回答】
本当にたくさんのかたから、ごぼう茶を飲んだら体調がよくなったというお便りをいただくよ。
そもそもごぼう茶との出合いは、10年前くらいにさかのぼるかな。何度かお話ししたけど、そのころぼくは太っていて、不整脈や腰痛、便秘に悩んでいたんだ。体重が重いせいで、心臓や関節に負担がかかっていたんだね。
そんなとき、偶然ごぼう農家のかたと知り合ってごぼうの効能を聞き、たくさん食べるようになったんだ。すると急に便通がよくなった。うれしくて、毎日ごぼうをたくさん食べようと思ったけれど、きんぴらごぼうやごぼうの煮ものを毎日作るのは大変だし、飽きちゃう。
それに、調理すると一緒に油や糖分も摂ってしまうから、ごぼうだけを、もう少し簡単に、カロリーを抑えて摂取する方法ってないかなと考えたんだ。
そして思い出したのが、昔、日本茶が高価だった時代に、ドクダミやごぼうでお茶を作っていたという話。これだ!とさっそくごぼうのお茶を手に入れて、飲み始めたんだ。
飲み始めて2、3日もすると、便通がよくなって体重が減るばかりか、体臭もなくなったから驚いた。
なぜそんなことが起こるのかなと、医者として不思議に思って調べたんだ。その秘密はごぼうの成分だった。
ごぼうはキク科の多年草で、冬は枯れるけど、翌春また発芽して、成長・開花を繰り返す植物なんだ。春に発芽し、初夏に花を咲かせる。秋になると葉が枯れて、春にほかの植物に先駆けて勢いよく発芽するために、冬の間、水分を体の中に蓄えておくんだ。
その“水分を蓄える”役割を果たすのが“イヌリン”という水溶性の食物繊維。イヌリンは、ちょうどおむつやナプキンに入っている、吸水性ポリマーのようなものなんだ。春にごぼうを掘り出してスパッと切って傾けると、ジャーっと水が出るんだけど、それはこのイヌリンの働きだよ。
腸の中に入ったイヌリンは、体内の余分な水分を吸ってくれるから便がほどよくやわらかくなり、便通がよくなる。すると悪玉菌の繁殖を防げるから、腸内環境もよくなって、便臭や体臭が消えるんだ。イヌリンは便秘解消の立役者なんだね。
また、イヌリンには利尿作用もあり、体内の余分な水分を尿として排泄することで、女性が気になる冷え、顔や足首のむくみも解消し、肌がきれいになる効果もあるんだ。
そしてごぼうには、イヌリン以外にもうひとつ、優れた成分がある。それは“サポニン”。これはごぼうの皮に含まれるポリフェノールで、抗酸化作用と創傷治癒作用、抗菌作用がある。
サポニンの“サポ”はシャボンの意味で、石けんと同じ界面活性作用、つまり油を分解する作用を持つんだ。
ごぼうが生きている土の中は、細菌やカビがうようよしている過酷な環境だけど、ごぼうは腐らないよね。なぜかというと、このサポニンが持つ界面活性作用と、それを応用した強い抗菌作用のおかげなんだ。
細菌や微生物の細胞膜は、コレステロール=油でできているんだけど、サポニンはその油を分解することで、細胞膜を破り、表面を覆って殺すことができるんだ。
だから、サポニンを体の中に取り入れると、腸の中の余分な油分を分解してくれる。ダイエット効果やメタボ解消が期待できるし、血液中の悪玉コレステロールを中和して動脈硬化を防いでくれる効果もあるといわれているんだよ。結果、糖尿病や高脂血症など、さまざまな病気も改善できる。イヌリンとサポニンってすごいよね。
※女性セブン2013年2月28日号