悪女──その響きに男性は魅力されてみたいと願い、女性たちは憧れを抱く。
「女同士って、パッと一目会ったときから“この人にはかなわないな”とか“この人より勝ってる”みたいなものが直感でわかるというか、ヒエラルキーを受け入れてしまうようなところがありますよね。悪女に対したときも同じようなことがいえると思うんです。私自身もそうですが、女性は誰しも心のどこかで悪女には惹かれる部分があると思いますね」
こう話すのは、『スーパー女優A子の叫び』(小学館/1470円)の著者である越智月子さん(47才)。本書は稀代の悪女・詩子をめぐって翻弄されるさまざまな人物たちの姿を描き、話題をよんだ『モンスターU子の嘘』(小学館)に続く、悪女小説第2弾ともいうべき長編。今回も懐かしき昭和の時代を舞台に、謎に包まれた銀幕のスーパー女優・朝子の実像を、さまざまな人の証言から浮き彫りにしていく。
「若いうちは、ちょっと男を惑わしたり、何股かけていても平気というような、わかりやすい悪女に惹かれると思うんです。でも、自ら“私はズルい女よ”なんて言ったり、善悪や良心の呵責を感じるのは悪女じゃない(笑い)。本当の悪女って、もっと無自覚だと思うんです。大人になると一見、穏やかでやさしそうな人や無邪気で天真爛漫な人の黒い部分を垣間見た瞬間、“怖い”と感じるじゃないですか。
要するに悪女は自ら望んでなろうとしてもなれるものじゃなく、他人が作り上げていくもの。だからこそ魅力的なんだと思うんです。悪女を描くにしても、いろんな人が表現する形で作りたいなっていうのはありましたね」(越智さん)
※女性セブン2013年3月7日号