アルジェリア人質事件では、プラント建設大手「日揮」の日本人社員10人を含む多数の尊い命が失われた。日本では「人命優先」の声が上がったが、英仏の反応はまったく違ったものだったと大前研一氏は指摘する。以下は、大前氏の解説だ。
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安倍晋三首相はアルジェリアのセラル首相に「人命優先」「人質を危険にさらさないでほしい」と訴えたという。しかし、アルジェリア政府は関係国への通告なしで軍による攻撃に踏み切り、結果的にテロリストもろとも多くの人質が犠牲となった。
このため、日本ではアルジェリア政府に対して「他の方法があったのではないか」「なぜ人質の安全を優先しなかったのか」という批判もあった。
それに対し、やはり自国民が犠牲になったフランスは早々にアルジェリア政府の対応を支持し、同じくイギリスも理解を示した。日本政府が同様のことをしたら国民から非難を浴びると思うが、そもそも「テロとの戦い」とはそういう非情なものである。
西欧諸国は、一度でもテロリストに妥協したら今後も同じような事件が起きるとわかっているから、交渉の余地はないということを思い知らせるためには人質の犠牲もやむなし、と考えているのだ。
※週刊ポスト2013年3月1日号