2月14日、大阪府大東市に住む小学5年生のAくん(11才)がJR片町線野崎駅のホームから身を投げ、快速電車にはねられ死亡した。遺書には、彼が通っていた市立深野北小学校の統廃合への抗議がしたためられていた。
児童数の減少等で進んでいる小学校の統廃合問題。大人の立場からすれば、仕方のないことと納得するしかないのかもしれない。だが、子供たちの思いは別だ。
Aくんが亡くなった時、仕事で仙台に向かっていたという父親は、あの日の後悔が尽きない。
「あの子は“ぼくたちの意見を聞いてもらっていない”と家族に訴えていたんですが、ぼくは残念ながらそれすら聞けなかった。仕事が忙しくて、たまに会った時だって、“何考えてるの?”“どうなの?”とか一緒に話したり、それがぼくのいちばんの希望ではあったんですけど、実現できなかった。“やれ勉強しろ、宿題しろ”とか、そんなことばっかり言っておったかなぁと思うんです」
そして父親は、噛みしめるようにこう続けた。
「早すぎるとか、短すぎるとか、そう思うかもしれないけれど…私は、息子は、よく生きたのだと、思うんです」
同世代の子供を持つママたちにとっても、このニュースは大きな衝撃だった。
臨床心理士の矢幡洋さんがこう説明する。
「大人にとって重大な問題ではなくても、子供にとっては大きな問題として悩んでいることはよくあること。大人の物差しで判断することなく、まずは子供の声に耳を傾け、その上で一緒になって問題解決のために考えることが大切です。
また、自殺は連鎖するといわれています。自殺によって世間の風潮が変わったという状況を目にしてしまうと、影響を受けてしまうことがあるんです。こうした状況下では、近くにいる家族が子供の睡眠や食欲、集中力などに変化がないかをきちんとチェックして、異変を感じたらすぐに悩みを聞いてあげてください」
Aくんの父親は棺の中で眠る息子を見て、最後にこう訴えた。
「閉校式をなんとか食い止めるためといっても、(それでも自殺は)してはいけないことだった。だから、“死を通してだったら変えることができるんだ”というメッセージをぼくたち大人は決して子供たちに残してはいけないと思うんです。
そして、それ以前に、子供も意見を言えて、場合によっては物事を変えていけるような世の中にしていかなければいけない。そうすれば小さな子供たちも死ななくてすむんですということを伝えていきたいです。遺された私たちは反省して学ぶことができたけど、でも…代償が大きすぎました…」
※女性セブン2013年3月7日号