中国艦船からの火器管制レーダー照射事件で日中が激しい応酬を続けていた2月上旬、日本政府の情報当局にある情報が駆け巡った。
〈小野寺五典・防衛相の女性スキャンダルをかぎ回っている動きがある〉──という内容だった。
折しも、2月5日に小野寺氏が記者会見でレーダー照射事件を公表し、国会で「今回の出来事は軍事的威嚇とみなすことができる」と指摘すれば、中国外務省は「日本の捏造」と反論、日本政府が証拠を公表するかどうかが国際的に注目されていた時期だった。
安倍政権では徳田毅・復興政務官が女性問題で辞任したばかりで、閣僚のスキャンダルとなると政権へのダメージは大きいが、それ以上に、中国と丁々発止とやりあっている防衛大臣の足元に火がつくとなると外交、安全保障に大きな影響が及びかねない。
情報は錯綜し、公安関係者の間では「相手は中国人か」との噂も流れた。内閣情報調査室はすぐに情報収集に動いた。関係者が入手した情報では、「相手は日本人女性だった」という。
「6年ほど前、政界で小野寺氏の女性問題が流れたことがある。当時はほとんど注目されなかったが、今回流れているディテールはそれと同じ情報のようだ。問題は、このタイミングで防衛大臣の昔の女性問題を蒸し返そうとしている背景と政治的意図であり、官邸もその点にピリピリしている」
情報源を辿って見えてきたのは、中国の影だった。中国の動きを察知した外務中堅官僚はこういう。
「こちらも仕事で中国政府関係者と情報交換をすると、日本の政治家の下半身やカネの話をよく知っている。中国には複数の情報経路があるためどのルートを辿っているかは定かでないが、少なくとも在日中国大使館は小野寺大臣に関する情報をつかんでいる。これまではハニートラップを仕掛けるのが中国の常套手段だったが、今回の情報は相手が日本人女性というから、日本国内まで網を広げて情報を集めていることがわかる」
※週刊ポスト2013年3月8日号