内閣府によれば、国民の収入に対する税金と社会保険料を合わせた負担率は、2012年度予算ベースで39.9%に及ぶ。つまり、私たちの年収のうち4割は国や自治体に徴収されていることになる。
だが、これはあくまで国民全体の平均だ。一般のサラリーマンの負担率はさらに高い。 所得税の徴収の不公平さについて簡潔に述べた有名な言葉に「トーゴーサンピン(10・5・3・1)」というものがある。所得がどの程度の正確さで税務署に把握されているかを示し、サラリーマン(給与所得者)の捕捉率は10割、個人事業主(自営業者)は5割、農林水産従事者は3割、政治家は1割という意味だ。
元国税調査官の大村大次郎氏は、税金を徴収する立場の論理をこう説明する。
「徴収する側から見れば、サラリーマンほど税金を取りやすい人たちはいない。会社に雇用される立場だから税金を給与から天引きされても文句は言いにくい。会社も国家や税務署に睨まれたくないし、自分の腹も痛まないので、せっせと会社員から税金を取り立ててくれる。その一方で、会社員以外からの徴税は簡単ではありません」
自営業者は自己申告なので、私的な経費を積み上げて“節税”することは当たり前。中には申告すらしない人もいる。
農家にも様々な税金特権がある。収入に対する減税の措置だけでなく、例えば農地を相続する場合、相続税の支払いは事実上、免除される。
医者からの税金徴収も大甘だ。一定規模以下の開業医は領収書なしで収入の7割を経費にできる。つまり、2000万円の収入があっても、600万円程度とかなり低く所得を見積もって税金が計算されるのだ。また、医療法人を作れば病院も医療器具も相続税を支払わずに相続することができる。
前出の大村氏が続ける。
「なぜ彼らばかり税制が優遇されているのか。それは、強力な業界団体を組織し、集票マシンや政治献金、ネガティブキャンペーンなどで、政党や政治家に圧力をかけられるからです。日本医師会という日本最強の“圧力団体”を持っているから医者の税金は恵まれている。税制とは平等なものではなく、“声の大きい者”が得をする野蛮なシステムなのです。
しかし、サラリーマンも泣き寝入りする必要はなく、やり方によって相当な節税が可能です。まずは“サラリーマンの税金関係は会社が全部やってくれる”という発想を捨てること。自分自身の収入と税金の関係をしっかりと把握することから始めてください」
※週刊ポスト2013年3月8日号