民主党政権時代に議論された宗教法人課税問題が、自民党の政権復帰とともに一気にトーンダウンした。『宗教法人税制「異論」』(現代企画室刊)の著者で元国会議員秘書の佐藤芳博氏は、「今こそ宗教法人の優遇税制を見直すべきだ」と提言する。
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そもそも宗教法人は地域の公共の道路や施設などを利用することを含めて成り立っている。民間法人は道路整備などに応分の税負担をしているのに、宗教法人は税金を減免されている。宗教法人も社会全体を支え合う制度の一員であるなら、応分の税を負担しなければ公平とはいえないだろう。
まず宗教法人が所有する固定資産に課税すべきだ。地方税が多い不動産関係諸税を課税すれば地方自治体の安定財源になるし、結果的に国からの地方交付税の減額につながり、国の財政悪化にブレーキをかけることができる。もちろん経済的に恵まれない小さな神社や寺、教会などは原則非課税にするという細かな配慮も必要になる。
次に収益事業の優遇税制を見直す必要がある。戦後の宗教法人実務に携わった関係者によると「終戦直後の経済混乱期はお布施収入も少なく、宗教団体は困窮を極めていた。そこで信者の負担を軽減するために収益事業が推奨され、税の軽減が行なわれた」という。
しかし今や宗教法人にとって収益事業は手放せないドル箱ビジネスとなっている。これでは本末転倒だ。収益事業を宗教法人以外の別法人で行なうように制度を変え、一般の民間法人と同様の課税制度を導入すべきである。
非課税とされている課目についても検討が必要だ。たとえば信者でない修学旅行生などが神社仏閣で支払う拝観料は非課税となっているが、本来はお布施ではなく入場料と考えるべき性質のものであり、課税を検討してよいのではないか。
ジャーナリストの山田直樹氏は『週刊朝日』で宗教法人の資産や収入すべてに課税すると年間3兆5000億円以上になると報じている。これは平成24年度当初予算ベースで消費税率の1.68%分にも相当する金額だ。にもかかわらず巨額の宗教法人課税問題がほとんど論議されず、消費税増税だけが先行するのは理解に苦しむ。
※SAPIO2013年3月号