【書評】『現場女子 ─輝く働き方を手に入れた7つの物語』(遠藤功/日本経済新聞出版社/1470円)
【評者】青木均・愛知学院大学教授(流通論)
女性セブンの読者には、仕事を持ってがんばっている女性もいらっしゃるでしょう。その中には、製品やサービスを生み出す、お客さんと接するという、現場で活躍しているかたがたくさんいらっしゃると思います。
ビジネス書として異例の大ヒットとなった『新幹線お掃除の天使たち』の著者・遠藤さんが、今度は現場で働く女性に焦点を当てて作り上げたのが本書です。男性が主役の職場で、男性と伍して活躍する女性の物語です。現場女子として、整備、飼育、製造、宅配、開発、店長、販売という分野で活躍する女性8人と遠藤さんとの対談が掲載されています。
遠藤さんは、現場での女性活用のあり方を探るために本書を企画したそうです。それは、日本では遅れている企業の女性活用を高めることにつながるからです。加えて、本書は、現場で働く女性たちに活躍モデルを提供してくれています。
8人の現場女子はみな、航空機整備、バイク製造、宅配便セールスドライバーなどの分野において男性と同等以上の活躍をします。
対談からは、女性と男性で差はないと言い切りながらも、女性らしさがいきる方法を探し求めている姿が感じられました。どの話も興味深く、一気に読むことができました。
とくに私が心を引かれたのは、開発女子である電機メーカーの平岡さんの物語です。平岡さんは、冷凍庫から食品を出してすぐに調理ができる、『切れちゃう冷凍』を備えた冷蔵庫の開発で手腕を発揮しました。
ヒットメーカーになるうえで、女性ならではのポイントはあるのかという質問に、平岡さんはこう答えています。「私は、男性陣が見過ごしていたようなところを、今まで職場に女性がいなかったがゆえに見つけられた。男性職場ほど女性が入ることによって見方や考え方が変わると思います」、「本当に仕事をしたいと思ったら、女性がいない職場のほうが、自分が得意な分野を選べると思います」。
現場女子恐るべし。男の自分はこんな言葉を吐けるだろうかと、唸ってしまいました。そして考えてみました。
女性ばかりの職場に自分が入ったらどうなるかと。自宅でさえも、妻と娘にどやされて、小さくなっている自分が、女性主役の職場で…。また唸ってしまいました。う~ん。
※女性セブン2013年3月7日号